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カレー細胞と組織のサイズ--生物の進化に学ぶ最適解

飯田哲夫 (アマゾンウェブサービスジャパン)

2018-06-19 07:30

 週末に走るジョギングルートにインド料理屋がある。自分が走るのは昼前くらいで、いつの頃からか走った帰りにそのカレー屋のキーマカレーをテイクアウトで買って帰るのが習慣になった。うまいのである。

 テイクアウトなので店では何も食べないのであるが、毎週行くので、待っている間に水が出るようになり、さらに最近はラッシーまで出るようになった。もちろんサービスである。しかし、カレー屋でテイクアウトするのが習慣化して以降、走っても体重が減らない説が浮上している。というよりむしろ増えている。

 つまり、毎週走るごとに、体を絞るのではなく、体を膨らませているようなのだ。そして、その理由は、走るごとに摂取するラッシー+キーマカレーだ。

 ところで、われわれの体が大きくなるとき、それは細胞のサイズが大きくなるのであろうか、それとも細胞の数が増えるのであろうか? 答えは数だそうだ。動物の細胞は、ある程度以上には大きくならず、体が大きくなるには細胞の数を増やすしかない。

 つまり、カレーを食べてカレー細胞を大きくしているのではなく、その数を増やしているのだ。では、なぜカレー細胞のサイズを大きくしないで、小さいカレー細胞を増すのだろう?

 本川達夫氏の『生物多様性 「私」から考える進化・遺伝・生態系』によると、細胞を大きくすることで、その中にいろいろな機能を持たせることができる一方で、ある程度以上に大きくすると、細胞内の物質の運搬が大変になるからなのだそうである。

 つまり細胞の表面から栄養を取り込んで、それが自然拡散でやっていけるサイズ以上には大きくならないということである。それを超えると、個々の細胞内に運搬の仕組みを作る必要が出て効率が悪い。

 「大きさは、0.01~0.1ミリほど。じつは、細胞の大きさはその後の長い進化の歴史の中で、これ以上大きくなっていません」ということだ。クジラも恐竜も、このサイズの細胞の積み上げでできている訳である。

 でかい細胞で頑張ってますという生物がいない以上、小さい細胞を構成単位として進化するというのは、生物の普遍的なベストプラクティスなのだろう。これを企業組織のアナロジーで考えると、最小構成単位を小さく保つというのがベストプラクティスとなる。

 そしてそのサイズは、外部から入ってきた情報が自然とすぐに全メンバーに伝わるサイズということになる。その中に指揮命令系統(物質を運搬する血管みたいな仕組み)がなくても良いくらい。ただし、それは単に個々の組織のサイズを小さくすれば良いというものではない。

 個々の細胞に対しては血管などを通じて必要な栄養がどんどん供給されるという状態が前提なので、細胞から細胞へ情報が伝達されていくということではないのがポイントだろう。どんな企業でも、たいていは部や課、チームみたいな感じで、末端は小さくなっているだろうから、むしろ、その細胞間の関係性を、情報伝達の観点でどうフラットにするかということの方がポイントなのかもしれない。

 先の本によると、この多細胞の仕組みがうまく機能すると、さまざまな特化型の機能を作れたり、サイズや形を柔軟に変えたりすることができて、環境への適応力が上がるのだという。

 ということで、カレー細胞の増加により、サイズや形が柔軟なものに変わりつつある。ところが、5月は風邪をこじらせて1ヵ月くらいジョギングには行かず、キーマカレーを食べなかったところ、やはり体重が減ったのである。つまり栄養の供給が止まってカレー細胞が減ったのだ。

 で、体調も戻ってきたので、もうラッシーも出ないかなと思いながらカレー屋に行ってみると、インド人の店員が流暢な日本語で「心配してましたよ。元気ですか?」とにこやかにラッシーを差し出すのである。あぁ、またカレー細胞が増えるのか。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

アマゾンウェブサービス ジャパンにて金融領域の事業開発を担当。大手SIerにて金融ソリューションの企画、ベンチャー投資、海外事業開発を担当した後、現職。金融革新同友会Finovators副代表理事。マンチェスタービジネススクール卒業。知る人ぞ知る現代美術教育の老舗「美学校」で学び、現在もアーティスト活動を続けている。報われることのない釣り師

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