海外コメンタリー

Dreamforce 2018を振り返る:次に目指すのは各プラットフォームの統合

Doug Henschen (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎 編集部 2018年10月11日 06時30分

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 Salesforceは、クラウドCRMサービスから、複数のクラウドと数百の個別サービスを抱える巨大プラットフォームへと成長した。それが、2018年の「Dreamforce 2018」で目にした、「小さいことは良いことだ」式の合理化されたアプローチが新鮮な変化に感じられた理由の1つかもしれない。

 Salesforceの最高経営責任者(CEO)Marc Benioff氏が、Dreamforceの基調講演(同氏の基調講演が2時間を切ったのは初めてかもしれない)で「あなたたち顧客にとって素晴らしいものになる」と発言したのを聞いたとき、筆者は最初眉唾ものだと思った。「Customer 360」「Einstein Voice」「Quip Slides」などを始めとして、技術に関する大きな発表もいくつかあったが、これらは従来の延長線上にある段階的な変化のように感じられた。Salesforceは、大きな技術的挑戦をしなくなったのだろうか?

 しかし、それぞれのクラウドに関する基調講演や、Dreamforce 2018で行われた詳しい顧客インタビューを聞いていくうちに、今回のイベントでは、各プラットフォームの無数のコンポーネントを1つにまとめ上げ、顧客が多くの機能を組み合わせてメリットを享受できるようにすることを目指していることが見えてきた。おそらくこれが、Customer 360や最近買収されたAPI統合ベンダーMuleSoftから基調講演の話が始まった理由だろう。またこれは、「Einstein」や「Einstein Analytics」のインターフェースやパッケージングに見られるように、サービスの整理統合や組み合わせが進んでいる理由でもある。

Customer 360
Customer 360は、Salesforceのエコシステム全体で、顧客情報を簡単に名寄せできるようにするための仕組みだと言える。プラットフォームの一部に組み込まれ、追加費用を払わなくても利用できるが、使えるようになるのは2019年の後半だ。

 現在のSalesforceは1つのプラットフォームではない。その実態は、核となる「Salesforce」「Lightning」のプラットフォームに「Commerce Cloud」「Marketing Cloud」「Heroku」などを加えた、複数のクラウドの集合体だ。そしてCustomer 360は、Salesforceのエコシステム全体で、顧客情報を簡単に名寄せできるようにするための仕組みだと言える。Customer 360はデータウェアハウスでも、マスターデータ管理システムでもなく、データの移動やコピーも行わない。むしろ、その中身は顧客情報の名寄せと変更データキャプチャのために設計されたマイクロサービスの集合であり、「ハブとスポーク」の役割を果たす。

 その狙いは、Salesforceのユーザー企業が、さまざまなSalesforceのシステムや、連携している外部のシステムに存在する顧客情報を(顧客の住所や、電話番号や、勤務先や、苗字が変わっても)正確に照合し、メンテナンスできるようにすることだ。残念なことに、Customer 360が使えるようになるのは2019年の後半だ。だが、よいニュースもある。この機能は、プラットフォームの一部に組み込まれ、追加費用を払わなくても利用できる。

 今回のDreamforceでは、Salesforceに買収されたAPI統合ベンダーであるMuleSoftも盛大にお披露目された。MuleSoftは今後も独立した組織とブランドを維持し、Salesforce以外の顧客との取引も続けるが、同社の「Anypoint Platform」は、「Salesforce Integration」の大きな支柱の1つになる。

 Unileverの最高情報責任者(CIO)Jane Moran氏は、SalesforceとMuleSoftの共通の顧客であり、Salesforce Integrationの基調講演に登壇するのに最適な人物だった。消費者向けパッケージ家庭用品を販売する大手企業Unileverは、2000種類以上のビジネスアプリケーションを使用しているという。Moran氏は、自分の役割は、最高情報責任者(Chief Information Officer)というよりも「最高統合責任者」(Chief Integration Officer)と言うべきものだと語った。MuleSoftのAnypoint Platformは、再利用可能なAPI接続のネットワークを生み出すため、統合を加速し、単純化するのに非常に役立っていると同氏は述べた。ソフトウェアの統合やコンポーネントの作成を進めるほど再利用性が高まるため、それ以降の統合プロジェクトがスピードアップされていく。Unileverでは、以前なら数カ月、あるいは数年かかっていたようなプロジェクトが、数日から数週間で終えられるようになってきているという。

Customer 360とMuleSoftに対する個人的評価

 長年にわたって多くの買収を繰り返してきた結果、Salesforceはプラットフォームの集合体になった。顧客は同社の各クラウドに分散している顧客情報を名寄せするのに苦労するようになっており(Customer 360はこの問題の解消を目指している)、アプリケーションの機能やデータを繋ぎ合わせるのも難しくなってきている(MuleSoftがこの問題を解決する)。これを考えれば、この2つの取り組みは方向性として正しく、これらの問題はもっと早く手当てされていてもよかった。

 残念ながら、Customer 360はまだ試験運用の段階だ。現在は、顧客企業の1社であるCrocsでテストされているというが、一般提供は2019年後半になる。

 顧客のマスターデータ管理や名寄せの技術は以前から存在するが、SalesforceはCRMのインターフェースでこの機能を提供すると述べている。これによって、顧客や顧客情報を一番よく知る現場の営業担当者や保守担当者、マーケティングの専門家などが、データの更新や修正のリクエストをデータ管理者に直接送れるようになる。

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