Salesforceの次の目玉は、ほかのエンタープライズソフトウェア企業も取り組んでいる「顧客の全方向的な把握」をこれまでとは違った考え方で実現することだ。この新たな取り組みは、「Customer 360」と呼ばれている。
同社は、開発会社や顧客企業向けの年次イベント「Dreamforce」でCustomer 360の概要を発表している。
共同最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff氏と最高技術責任者(CTO)のParker Harris氏は、Dreamforceの基調講演でCustomer 360の概要を説明した。Benioff氏は、顧客第一の主義について繰り返し述べた。Harris氏は、Customer 360についてもう少し技術的な話をした。デモの中で、複数のシステムでCustomer 360によってデータがいかに接続されるかを披露した。
Salesforceが解決しようとしている問題は新しいものではないが大きなものだ。顧客企業の多くは、部門間のデータの分断に苦しんでおり、これを原因としたまとまりのない顧客体験によって、長年の間、企業と顧客のインタラクションが損なわれてきた。
しかしこの問題には、すでにSAPやMicrosoft、Oracleなど、多くのエンタープライズソフトウェア企業が取り組んでいる。
Salesforce Customer 360担当シニアバイスプレジデントPatrick Stokes氏は、従来の取り組みの問題は、企業がカスタマージャーニーをコントロールできると仮定していたことだと述べている。
同社によれば、従来のマスターデータ管理ツール(各アプリケーションの顧客の記録を最新の状態に保つ役割を果たす)には、IT部門に大きな負荷がかかり、情報がリアルタイムに更新されないという問題がある。
Customer 360はSalesforceのあらゆるエコシステムの真ん中に位置づけられている。
Salesforceは、Mulesoftの買収によって、顧客データを元のアプリケーションに置いたまま統合し、データがクラウドにあるか、オンプレミスにあるかに関わらず、データが統合された状態を維持してパーソナライズされた体験を実現することを目指している。
Customer 360は、管理者向けにクリックベースのユーザーエクスペリエンスを提供し、アプリとデータを管理できるようにする。管理者がアプリ間の連携を取れるようにすることを想定している。このダッシュボードによって、顧客データ、アプリケーション、そしてさまざまなコネクションを1カ所で確認できるようになる。
同社は「Customer 360 ID」によって、あらゆる顧客に一意の識別子を付与しようとしている。これには、名前、電子メールアドレス、電話番号、ソーシャルメディアのハンドルなどが含まれる。各クラウドの顧客データは、Salesforceのツールによってマッチングされ、照合され、更新される。また同社によれば、Customer 360のIDでは、各データはもともとそのデータがあったシステムに残したまま処理される。データは必要な場合にだけ取り出され、データレイクアーキテクチャやデータウェアハウスアーキテクチャを用いることはしないという。
Salesforce Customer 360ではサービス、マーケティング、コマース向けにあらかじめビルドされたパッケージも提供される。こうしたパッケージによって、企業は「Service Cloud」「Commerce Cloud」「Marketing Cloud」での最も一般的なユースケースでのエクスペリエンスを素早く導入できる。
Customer 360の考え方は、「Commerce Cloud」でショッピングカートに商品が放置されている場合にそれを検知し、「Marketing Cloud」で割引キャンペーンを実施するようなことを可能にするというものだ。
Customer 360とほかのアプリケーションの連携を担うのは、MuleSoftの「Anypoint」だ。この連携によって、同社が言う「真に完全なカスタマービュー」を作り出すという。
Customer 360はプラットフォームに組み込まれる形で実現される予定で、Stokes氏は、機能の多くは既存のライセンスで利用できるようになると述べている。
SalesforceはCustomer 360の価格に関する詳細を明らかにしていない。一般提供の開始は2019年後半になる予定だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。