コンサルティング現場のカラクリ

要件定義力の再構築(3):「要件」自体を再「定義」して細分化する(前編)

宮本認(ビズオース )

2019-02-23 07:00

(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」から転載、編集しています)

 要件定義は難易度が高い仕事とはいえ、全く手がないわけではない。ここからは、要件定義力を上げる具体策について議論を進めていこう。

 まず考えたいこと、それは要件定義を簡単にしていくことだ。もっとも、要件定義が持つ本質的な難しさを減らすことはできない。ここは変えようがない。考えなければならないことは、簡単と言えるように仕事の細分化を図っていくことだ。これまで要件と捉えてきたものを見つめ直し、組み立てを変えていこうというわけだ。

 また、要件定義で決めるべき項目も減らしたい。そもそも要件定義というのは、重要な仕事でありながら、考えるべきことが多過ぎる。業務を設計しながら、システムも設計しなければならない。少々、難易度が高過ぎるといえる。だから、段階分けすることを考えていくべきである。

 最初に考えたいのは、定義する項目を減らすこと。すなわち段階分けの議論である。あらかじめ断っておくが、システムを作るために定義することを減らすのは、本質的にはできない。だから、できることといったら、細分化して進めること(=段階分け)になるわけだ。企業によっては、予備検討というものを分けたり、プロジェクト計画というものを分けたりしている。要件定義を中心に、こうしたことを再構成するのを提案したい。

 一般的に要件定義とは、プロジェクトの目的を定め、業務要件を定義し、システム要件を定め、ベンダーへ見積もりを依頼し、費用を確定させ、投資以上になるよう効果を定めることで、要件定義を完了してベンダーに委託契約を行う。おおむねこうしたところへ手法が収れんしているといえるだろう。

 よくよく考えてみてほしいのだが、「プロジェクトの目的や効果を定める」というのはそうそう簡単ではない。これは、経営としての決定であり、企業の方向性や各部門の利害などに精通しなければ、なかなか判断できるものではない。言葉遣い一つに神経を使うものであり、会社の動向に詳しくないと、実利があってさまざまな人にとってちょうど良い作文はできるものではない。

 「業務要件を定義する」というのも同様だ。今の業務がどうなっているか、基本的にここに精通していないと、変更したときの正しい影響を計ることはできない。影響が分からないものに対して変える勇気を持てるのは、まさに経営者しかいない。業務に精通することがどれだけ難しいか、これはやった人にしか分からない。

 将来どうあるべきか、一つひとつの業務の考え方を定める行為であり、なかなか決め切れるものではない。新しい事業や業務の場合はなおさらだ。やったことがないので、何が正しいかを決められるはずもない。

 ベンダーとの契約もまとめるのも簡単ではない。1円でも安い方がいいが、先方もなかなか応じてくれるはずがない。もしかすると、さまざまなトラップを提案や契約の中に埋め込んでくるかもしれない。「なぜそう高いんだ」「もっと安くする方法はないのか」「本当にこの金額でできるのか」――。経営幹部や財務部門はそう言ってくるだろう。妥当な価格であることも証明しなければならないが、インターネットで調べれば出てくるわけでもない。

 算数・数学の複雑な問題は、大問の中に小問が幾つか分けられていて、順に解いていくと最後に全部解けるように組み立てられているものも多い。要は、細分化して複雑な問題に当たるのだ。要件定義も同じだ。問題自体は非常に複雑で難易度が高い。小問を区切って解いていくのである。

宮本認(みやもと・みとむ)
ビズオース マネージング ディレクター
大手外資系コンサルティングファーム、大手SIer、大手外資系リサーチファームを経て現職。17業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。金融業、流通業、サービス業を中心に、IT戦略の立案、デジタル戦略の立案、情報システム部門改革、デジタル事業の立ち上げ支援を行う。

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