九州フィナンシャルグループ、顔認証活用で物理セキュリティを強化

大河原克行

2019-02-19 06:00

 監視カメラや生体認証技術を活用したセキュリティソリューションを開発、販売しているセキュアは、鹿児島市に本店を置く九州フィナンシャルグループに、顔認証を活用した「なりすまし」や「のぞき見」を防止するセキュリティソリューションを納入し、2月18日に実証実験を開始したと発表した。

 九州フィナンシャルグループが推進している働き方改革の一つであるテレワーク勤務において、課題となっていたセキュリティ対策を、顔認証技術を活用して解決することができるという。

 セキュアの谷口辰成社長は、「在宅勤務や外出先での仕事のほか、産休中の社員が、繁忙期に業務支援で利用するといった際に、操作環境におけるセキュリティの確保を実現することを想定している。サイバー空間におけるセキュリティだけでなく、PCを利用する環境を想定したフィジカル(物理的)セキュリティの強化を推進したい」としている。

セキュアの谷口辰成社長
セキュアの谷口辰成社長

 九州フィナンシャルグループは、2015年10月1日に、熊本に本拠を置く肥後銀行と、鹿児島で展開する鹿児島銀行が経営統合して発足した金融持株会社。肥後銀行と鹿児島銀行の地元を中心に、九州における存在感を発揮する経営基盤の確立を目指し、広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルの創造に取り組んでおり、「お客さまにとって九州トップの総合金融グループ」の実現を目標に掲げている。

 現在、2020年度(2021年3月期)を最終年度とする第2次グループ中期経営計画に取り組んでおり、同計画を、グループシナジーを最大化させていく「融合ステージ」と位置付け、「『地域活力共創』グループへの進化」「グループ人材力の強化」「グループガバナンスの高度化」の3つの基本戦略を推進しているところだ。

 今回の「なりすまし」や「のぞき見」を防止するセキュリティソリューションは、同社が取り組んでいる働き方改革の一環として導入しているテレワークを支援するものと位置付けており、カフェやコワーキングスペース、交通機関、待合室などといった共有する環境でテレワーク作業を行う場合に、第三者による作業ののぞき見による機密情報の漏えいリスクを削減するのが狙いだ。「テレワークの推進において、情報セキュリティ対策は行ったが、PCを取り巻く物理空間に対する対策ができていない課題を解決することができる」(セキュアの谷口社長)という。

 セキュアが持つ顔認証技術のサービスを活用することで、事前に登録した人物以外の顔を検知した場合には、PCの画面をシャットダウンする機能や、顔データをログデータとして保存、管理し、「のぞき見」や「なりすまし」による情報漏えいリスクの低減を図ることができる。

PCに搭載したカメラを使用してのぞき見を防止できる
PCに搭載したカメラを使用してのぞき見を防止できる

 具体的には、登録したユーザーが作業していることを監視する「ユーザー監視機能」、操作者として登録していないユーザーを検知し、それを異常と判断する「非ユーザー検知機能」、ユーザーと非ユーザーを同時に検知した場合には、のぞき見されていると判断する「のぞき見防止機能」、複数の顔を検知した場合には、中央に近い顔を作業者と判断し、それ以外を閲覧者と判断する「作業者判断機能」、のぞき見されているような異常事態だと判断した場合に、PCの作業画面を見えなくする「異常発生時のWindowsロック機能」、利用ログや操作画面キャプチャ、カメラ画像をログとして保存する「イベントログの保存と閲覧機能」で構成。利用者が、PCやシンクライアント端末で、自宅や外出先などから社内サーバにアクセスした際に、このセキュリティソリューションが起動する仕組みになっている。

 例えば、カフェなどで作業をしている場合に、PCに搭載しているカメラに、登録者以外の人の顔が映ったら、PCに表示されている内容をのぞき見されていると判断して、PCの画面を表示しないといったことが可能になる。

 まずは、約50台を対象に同セキュリティソリューションを導入し、実証実験を行い、本格導入を検討することになる。

 谷口氏は、「将来的には、スマホを使ってPC画面の写真を撮るといった行為に対しても、PCに搭載したカメラで瞬時に異常を検出し、情報漏えいを防止する機能を実装したいと考えている。働き方改革やテレワークの導入においては、同様のニーズがあると想定しており、機能強化を進めることで、顔認証技術を活用した課題解決を提案していく」と述べた。

 セキュアは、セキュリティに特化したシステムインテグレーターとして、2002年10月に設立。映像監視分野においては画像解析の研究開発に取り組んでおり、監視カメラを用いた映像監視システムや、指紋認証や顔認証といった生体認証技術を用いたオフィスおよび工場向けの入退室管理システムなどで多くの実績を持つ。また、画像解析技術は、セキュリティ用途以外にも活用。「人数カウント」や「男女・世代分析」といった解析・分析ツールを開発して、これらのソリューションは、小売業界向けのマーケティング用途にも活用されている。

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