デジタル変革の加速とERPの高度活用を推進--SAPジャパンの2019年戦略

國谷武史 (編集部)

2019-02-22 06:00

 SAPジャパンは2月21日、都内で2019年度(2019年12月期)の事業戦略説明会を開催した。代表取締役社長の福田譲氏は、戦略での重点テーマに「インテリジェント企業の普及」「日本型変革フレームワークの開発」「デジタルエコシステム」の3つを挙げている。

SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏
SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏

 説明会の冒頭で福田氏は、最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏が就任した2009年から10年間におけるSAP全体の業績変化を紹介した。2009年度と2018年度の通期業績を比較して、売上高は2.3倍、企業価値は2.7倍になった。注力するクラウド関連の2018年度実績は、ユーザー総数が約1億8600万人、「SAP S/4 HANA」の導入は1万500社に達した。福田氏は併せて、現職就任からの4年間で日本法人の総売上としても53%の成長を達成したと報告した。

 この期間を回顧した福田氏は、グローバル市場について企業システムのオンプレミスからクラウドへの移行が進む“荒波の時代”だったとし、国内市場では“保守的”な日本企業文化の中でクラウド化を含む「デジタル変革」をどう推進するかがテーマだったとした。

 グローバル戦略では、クラウドを軸としてインメモリデータベース技術のSAP HANAの開発(2011年)やS/4 HANAのリリース(2015年)を皮切りに、ここ数年は買収などを通じて人材管理や経費精算、製造管理、CRM(顧客関係管理)といったERPの周辺領域に事業ポートフォリオを拡大させてきた。福田氏の就任時期はこうしたグローバル戦略を加速させ始めたタイミングで、同氏は“保守的”とされる日本市場の特性とグローバル戦略の整合性を図ることに注力してきた。

 日本市場の現状について福田氏は、ERP導入における非製造業の割合が半数を超えて製造業と逆転し、ERPの導入業種が拡大したと説明。SaaS系を含むクラウドサービスの導入ペースは、海外では半数を超えるのに対し、日本は3分の1程度にとどまるという。一方で、S/4 HANAの導入ペースは海外に比べて若干鈍いものの、「SAP(ERP)からSAP(S/4 HANA)への再導入が多いのはユニーク」(福田氏)という。

2019年戦略のテーマ
2019年戦略のテーマ

 2019年の事業戦略で挙げられた3つの重点テーマは、デジタル変革の推進にフォーカスしたもので、これにはクラウドを含むERP活用の“高度化”も含まれる。

 「インテリジェント企業」は、業務アプリケーションやセンサ、カスタマリレーションといった領域から収集されるさまざまなビジネスデータを人工知能(AI)/機械学習で分析し、そこから得た洞察をビジネスに還元していくという循環型のデータ活用のビジネスモデルを実現した企業を指す。

 「デジタルエコシステム」は、そうしたビジネスモデルをともに開発・実践していく異業種融合型の共創体制となる。前者に関する仕組みとしてはSAPのHANAやLeonard、各種クラウドサービス、パートナーソリューションなどによって構成され、後者では2月に都内で開設した「Inspired.Lab」やスタートアップ支援の「SAP.iO」、産学連携の「Business Innovators Network」などがその実現を担う。

 「日本型変革フレームワークの開発」は、「デジタルエコシステム」と並んで、顧客が「インテリジェント企業」を目指していくための要素になる。福田氏は、これまでに多くの企業を支援した経験から、日本では“保守的な”経営層の意識改革からスモールスタートを含む新規ビジネスの実証、そして、事業化というステップを踏むことでデジタル変革を成し遂げていくとし、そこで必要となる人材・プロセス・環境などを“変革のパッケージ”として提供するとした。

 この好事例として福田氏は、工具資材販売などを手掛けるトラスコ中山と、SAPジャパンやコマツなどが出資するランドログの協業モデルを紹介した。建設で必要な工具などを現場で購入できるコンビニエンスストアのような仕組みをトラスコ中山が展開。そこでの利用や在庫などの状況データをランドログのプラットフォームで収集、分析し、利用予測に基づく商品の迅速な提供などにつなげる。このデータ活用の仕組みを全国の建設現場、さらには全世界への展開を構想する。

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