山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国のニューリテール(新零售)が量の戦いへ

山谷剛史 2019年02月27日 07時00分

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 ITと物流と小売を融合した「ニューリテール(新零售)」は阿里巴巴(Alibaba)によって提唱され、阿里巴巴は新零售のお手本的な店として、生鮮スーパー「盒馬鮮生(Hema xiansheng)」を中国全土に展開している。

 盒馬鮮生については検索すれば日本語による数多くのレビューが発見できるので、簡単な説明にとどめるが、「いけす内の魚や蟹などを購入してその場で調理してもらい食べることができる」という点と、「アプリで注文できて、エリア内においては(実際はさておき公称では)30分以内で配達を実現」という点が新しい。盒馬鮮生は内陸の省都クラスの都市でも出店を進め、中国全土にそれを122店舗まで増やした。

 盒馬鮮生の登場後、「その場で調理したものを食べられて、配達も迅速」という小売モデルを真似した新零售の生鮮スーパーが続々と登場した。特に都市部では、騰訊(Tencent)が投資した永輝超市もその1つだ。永輝超市の中でも大きく、盒馬鮮生に似たスーパー「超級物種」と、住宅地などに展開するコンビニサイズのミニスーパー「永輝生活」「永輝mini」を展開している。

 贏商網によると、永輝超市は3年連続で最も多くの店舗を開店したスーパー(グループ)となり、現在約500店舗を抱えるという。2018年9月には、福建省福州で、生鮮や日用品や輸入商品を最速30分で届ける「永輝生活衛生倉」という新サービスを開始し、生鮮を中心とした300平方メートルから600平方メートル程度のスマート倉庫を開発するなど、新サービスの開発も騰訊と永輝が共同で行っている。

 多くの新零售のスーパーで「30分以内」ないしは「1時間以内」の配達を実現するとしているが、店舗から限られた距離のエリアに限られる。そこでいかに都市で多数の店舗兼倉庫を展開していくかが大事となってくる。永輝超市グループについては、配送センターから配送するのではなく、ECサイト「京東」の配送員を活用し、電動バイクなどで倉庫(兼店舗)から配送スタッフが配達し、短時間での配達を実現する。

 こうした倉庫を中国語では「前置倉」と呼び、新零售を紹介する際にはしばしばこの単語が使われる。何かニュースを検索する際はこのキーワードも活用するといいだろう。

 「中国で新しいネットと融合の小売りといえば新零售の盒馬鮮生」というイメージを持つ人は多いと思う。とはいえ、筆者の経験上、新零售だからといってわざわざ遠出して野菜や日用品を買おうとする人などほぼいない。新零售の店舗開店で訪れる人々は、地元や海外のメディア関係者や視察しに来た人が目立つ。

 有名な盒馬鮮生とて例外ではなく、店舗の半径3キロ以内の利用客にしか歓迎されない。人々にとって必要なのは、近所にあり生鮮や日用品の配達も可能な実用的なスーパーだ。新零售を普及レベルまで展開するなら、どれだけたくさんの地区配送センターとなる店舗や倉庫を確保するかがカギとなる。となると騰訊と永輝超市連合による、後追いではあるが、力技でとにかく多数の店舗を出していく方法は、新零售の普及としては正しいと解釈できよう。

 盒馬鮮生も、小売りと提携する永輝超市や、その他の新零售のスーパーにしても、自前で店舗を増やしていくだろう。そうした新零售のスーパーに立ちはだかるのが、大手ネット企業の美団点評が手掛ける、無数のスーパー・コンビニ・個人店舗・生鮮市場と提携したネットデリバリー「美団外売」などである。無数の店舗が登録しているので、配送費はかかるものの、商品数は非常に充実しているし、値段も競争の中でこなれている。

 こうした小売連合+配送サービスが既存である中で、新零售のスーパーがいかに食い込んでいくのだろうか。あるいは美団のサービスの前に新零售のスーパーは中国全土に展開せず、一部大都市限定で普及するだけのサービスとなるかもしれない。今後、阿里巴巴と騰訊が面での倉庫展開を推し進め、学びがいのある魅力的な新零售の仕掛けがされることを期待しよう。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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