45年振りの有効求人倍率
2018年夏のボーナスシーズン前後から、お客さまの担当者が変更になるという報告が多くなってきました。今になって振り返ってみますと、2018年6月以降、有効求人倍率が1.6を超えて4カ月連続で上昇しました。知人からの転職報告も多くなりました。人手不足の裏側では転職市場が活況を呈しており、それぞれのキャリアを求めて異動されているのかと思います。
厚生労働省が2019年2月1日に発表した2018年の平均有効求人倍率は、前年を0.11ポイント上回り1.61倍で、1973年以来となる45年ぶりの高水準となりました。1973年は第1次オイルショックが起きた年です。その後、狂乱物価などと騒がれ、1974年に戦後初めてのマイナス成長に転落し、高度経済成長が終息を迎えました。今回は、その時の水準と並ぶわけですから、好景気による人材不足は現実のものといえます。
中堅企業のIT担当者の21%が転職
2018~2019年の年末年始にかけて、お客さまの担当者の退職や異動について調査しました。従業員100~1000人未満の中堅企業に属するIT担当者の21%が転職している実態が分かりました。総務省統計局が発表している日本国内の転職率は、過去5%±1%で推移しています。それと比べると、とても高い転職率だといえます。
IT業界の平均は10%とも15%ともいわれています。成長著しいベンチャー企業などは、30%を超えるときもあるようです。IT業界で働く人が特にこらえ性がないというわけではなく、ジョブとスキルのミスマッチが入社後に判明したり、今後のキャリアパスを考えて転職したりすることが多いのではないかと思います。
ひとり情シスの転職率は3割
ひとり情シスの企業に限って転職率を算出すると、なんと30%を超えていました。ひとり情シスは、社内のIT全般を一人で切り盛りするだけでなく、高いコミュニケーション能力が求められ、トラブルにもすぐに対応しなくてはなりません。こうした「スーパーひとり情シス」タイプの方は引く手あまたであり、新しいキャリアを積極的に紹介されたり、猛烈なヘッドハンティングを受けたりしているケースが増えているようです。早朝に人材紹介会社に登録すると、立ちどころに求人企業に情報が伝播して各社条件の提示が始まり、昼過ぎには決まってしまうという話もたびたび耳にします。
退職される理由はさまざまでしょう。表向きの理由としては、混乱していたITインフラの更改が一段落して安定期に入り、しばらくの間は大きなプロジェクトがないことを挙げる方が多いそうです。転職先には、複数のIT担当者を抱える企業を望む傾向が強いです。やはり、一人でシステムを支える苦労から離れたいという気持ちもあるのではないでしょうか。
退職したひとり情シスの「穴」をどのように埋めるのかについては、後日改めて取り上げます。
- 清水博(しみず・ひろし)
- デル 上席執行役員 広域営業統括本部長
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横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス、本社出向)においてセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のダイレクターを歴任する。
2015年、デルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手がけた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在、従業員100~1000人までの大企業、中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。自部門がグローバルナンバーワン部門として表彰され、アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。
産学連携活動として、近畿大学と共同のCIO養成講座を主宰する。著書に「ひとり情シス」(東洋経済新報社)。AmazonのIT・情報社会のカテゴリーでベストセラー。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。