世界のサーバー運用環境の3分の1近くをRed Hatが占めていることを考えれば、「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 7」プラットフォームの最終版とも言えるバージョンがリリースされたことは大きなニュースだと言えよう。もちろん、IBMのRed Hat買収が示しているとおり、Red HatはもはやLinuxだけに取り組んでいるわけではない。同社が支えているのはクラウドだ。このRHEL 7.7のリリースでハイブリッドクラウドやマルチクラウドがサポートされていることを見ても、そのことは明らかだろう。
しかし、まずはRHEL 7.7の基礎を振り返ってみよう。今回のRHEL 7.7のリリースに合わせて、RHEL 7は10年間あるライフサイクルの「Maintenance Phase I」の段階に移行する。「Maintenance Phase I」では、本番環境のインフラの安定性維持と、OSの信頼性強化が重視される。今後のRHEL 7のマイナーリリースは、基本的にセキュリティと安定性の維持のためのパッチになる。新しい機能を求めている場合は、「RHEL 8」の導入を検討すべきだろう。
RHEL 7.7のアップデート内容でもっとも重要なのは、最新のエンタープライズ向けハードウェアへの対応と、最近Intel製プロセッサーに発見された脆弱性「ZombieLoad」の緩和策だ。残念ながら、RHELはIntel製プロセッサーの問題を根本的に修正できるわけではない。これは、多くの作業でプロセッサーの処理速度が遅くなることを意味している。ただし、これはすべてのOSに共通の問題であり、RHELだけの話ではない。
最新版のRHEL 7では、ネットワークスタックのパフォーマンスも強化されている。今回のリリースでは、仮想スイッチング操作の処理をネットワークインターフェースカードのハードウェアにオフロードできる。これは、仮想スイッチングの機能とネットワーク機能仮想化(NFV)を使用している場合、「Red Hat OpenStack Platform」や「Red Hat OpenShift」などのクラウドやコンテナプラットフォームでのネットワークの性能が改善されることを意味している。
また、RHEL 7.7では、問題を予測分析するサービス「Red Hat Insights」を利用できる。
開発者向けのアップデートとしては、RHEL 7.7には「Python 3.6」 インタープリターが付属するようになった。これまで、Python 3は「Red Hat Software Collections」の一部としてのみ提供されていた。RHEL 8でもデフォルトのPythonはPython 3になるため、現在Python 2を使用している人は、Python 3への移行を始める時期かもしれない。
クラウドに関する話題では、RHEL 7.7では「Image Builder」がサポートされた。この機能はRHEL 8にも存在するもので、「Amazon Web Services(AWS)」や「VMware vSphere」「OpenStack」などのクラウドや仮想化プラットフォームで使用するRHELのカスタムシステムイメージを作成できるというものだ。
また、クラウドネイティブ開発者向けのアップデートとして、RHEL 7.7では、RHELのワークステーションでRed Hatの分散コンテナ管理用のツールキット(「buildah」「podman」「skopeo」)がサポートされた。プログラマーは、デスクトップ上でビルドしたコンテナ化アプリケーションを、「Red Hat Universal Base Image」を使用してハイブリッドクラウド上でビルド、実行、管理することができる。
RHEL 7.7はすでに公開されており、Red Hat Enterprise Linuxのサブスクリプションを持っているユーザーは、Red Hatカスタマーポータルから入手できる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。