山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国旅行で一般化するミニプログラム「微信小程序」--中国人観光客向けに海外進出

山谷剛史 2019年08月21日 07時00分

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 先日、中国のシルクロード地域を旅行してきた中国人の友人から、「中国国内の旅行で、旅行系アプリは微信小程序(WeChatミニプログラム)や微信公衆号(WeChat公式アカウント)しか使わなかった」という話を聞いた。ゲームや定番のアプリもスマートフォンに入れてあるが、各地で利用するサービスは微信小程序、あるいは微信公衆号を利用したということだ。

 微信小程序とは、微信(WeChat)から起動するインストール不要のミニプログラムで、初回はデータをダウンロードするが、次回以降は端末のキャッシュから高速起動できる。ミニプログラムのパッケージサイズは、当初1MBが上限だったが、2~4MBへと引き上げられ、よりさまざまなアプリを開発しやすくなった。第5世代移動通信システム(5G)へと移行するにつれて、ミニプログラムの最大サイズも上がっていくだろう。

 旅行では、移動や観光で利用するアプリをインストールするよりもミニプログラムの方が何かと好都合だ。例えば、観光地にQRコードが設置されていて、スマートフォンで読み取るとミニプログラムがダウンロードされる。観光地の案内表示や入場料の支払いなどを微信で済ませられる。スマートフォンに表示されるQRコードをチケット代わりにすることも可能だろう。また、バスや地下鉄に乗るときやレンタカーを借りる際も、微信小程序で検索すれば、該当するものが表示される。

 微信小程序が普及した背景には、個別にアプリをインストールするよりも、ミニプログラムの方がアンインストールの手間などが掛からないということが大きい。微信のアカウントとひも付けられるため、ユーザー登録の手間も少ない。さらには、中国では、Google Playストアが利用できないという別の理由もある。スマートフォンベンダーやインターネット大手がアプリストアを提供しているが、アプリによって配信先がまちまちだ。

 2019年6月に発表されたQuestMobileの調査結果によると、同一サービスであってもアプリ版とミニプログラム版で月間アクティブユーザーに大きな差があるという。例えば、旅行系サービス「同程旅遊」は、アプリ版が514万であるのに対し、ミニプログラム版が1億5174万となっている。同様に、シェアサイクルのMobikeはアプリ版が1318万、ミニプログラム版が3580万、鉄道切符サービスはアプリ版が1133万、ミニプログラム版が2856万となっている。旅行サービス大手のCtrip(携程旅行)でもミニプログラムの利用が多い。

 ミニプログラムについては微信のほかにも、阿里巴巴(Alibaba)系のアントフィナンシャルの支付宝(Alipay)が有名である。また、字節跳動(ByteDance)や百度(Baidu)、スマートフォンメーカー連合(快応用というプラットフォーム)などが参入し、合計で9つのミニプログラムプラットフォームがある。

 阿拉丁小程序数据統計平台の「2019年上半年小程序行業発展白皮書」によれば、ミニプログラムの1日当たりのアクティブユーザー数は平均で微信が2億5000万、支付宝が2億3000万。それに対して、百度は月間1億8000万、快応用は同2億となっている。百度小程序では百度系のサービスを利用するだけといった微信小程序や支付宝小程序の穴を埋める役割にとどまっている一方、支払いが生じるサービスでは、キャッシュレスを抱える微信小程序と支付宝小程序が強い状況となっている。

 このように、騰訊(Tencent)の微信は膨大なSNSユーザーを抱え、彼らがキャッシュレスユーザーとなり、さらにアプリストアプラットフォームを利用しているわけだが、さらにこの勢いは海外に広がろうとしている。2019年4月には、ドバイ観光局・EMAARグループ・騰訊が、微信のミニプログラムとキャッシュレスサービスをドバイ各地で利用できるよう普及を進める「WeChat go歓迎計画」を発表した。微信支付(WeChatPay)が中国人向けであるように、この施策も現地人ではなく中国人観光客向けだろう。中国国内では、微信小程序を使って、微信支付で支払う習慣が出来上がっている。海外でも中国人観光客が微信支付で支払いができるように活用していくことだろう。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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