SAPとMicrosoftが先頃、クラウド関連事業で提携を強化した。目新しい組み合わせではないが、その中身を見るとなかなか興味深く、今後のエンタープライズ市場の勢力争いに影響を及ぼす可能性も。今回の動きは果たして何を意味するのか。
Azure上でS/4HANAおよびSCPを提供
両社の発表によると、今回の提携強化により、Microsoftのクラウド基盤サービス「Microsoft Azure」上でSAPの最新ERP「SAP S/4HANA」およびPaaS「SAP Cloud Platform(SCP)」を提供するための活動を両社で協力して行っていくとしている。
現在、オンプレミス環境で旧バージョンのERPを使っているSAPユーザーに対し、そのワークロードをAzureへ移行する支援については、かねて両社で進めてきた。
今回は旧来のERPのサポートをSAPが2025年で終了することから、最新バージョンであるS/4HANAへの移行を両社および両社のパートナーであるSIer(システムインテグレーター)が連携して一段と促進していこうというのが狙いだ。
こうした新たな取り組みの中で、MicrosoftはSCPのコンポーネントをAzure上で再販する形になる。パブリッククラウドサービス事業者がSCPを再販するのは、Microsoftが初めてとなる。
SAPのJennifer Morgan 共同CEOは今回の発表に際し、「両社の提携強化は、ひとえにお客さまがクラウド上のS/4HANAに移行される際の複雑さを軽減し、コストを最小限に抑えることを目的としたものである」とコメント。
MicrosoftのJudson Althoff ワールドワイドコマーシャルビジネス担当エグゼクティブバイスプレジデントも、「Azureを“優先クラウド”としたSAPの選択は、両社の関係を差別化された形で深めるものである」との見解を示した。