職場のコラボレーションに関する大ヒットソリューション(「Slack」を思い浮かべてほしい)の影には、広く受け入れられずに終わった数多くのテクノロジーがある。その例として、テレプレゼンスロボットといったものを思い浮かべてもらえばよいだろう。
このため、仮想現実(VR)によるコラボレーションという、売り文句ほどの実力を発揮できずに終わりそうな分野を語る際には、ある程度の慎重さが必要となる。しかし、Spatial Systemsという会社はしっかりとした実力を備えていると考えてよいだろう。同社は、実物そっくりのアバターをVR世界の職場に登場させ、ビデオ会議や出張を不要なものにしようとしている。
シリーズA投資ラウンドを成功させた結果、総額2200万ドル(約24億5000万円)を調達した同社は現在、豊富な資金を有する新興の複合現実(MR)企業の一角を占めるようになり、拡張現実(AR)およびVRの分野で著しい成長を遂げている。
Spatialの大きな売りは、デバイスを選ばないという点だ。創業者らは、リモートワークが普及していくという展望のもと、同社を立ち上げた。ただし、ビデオ会議で相手の顔を見ながら画面を共有するというのは、どうしてもぎこちなさを拭い去れない。リアルタイムでのフィードバックや、現実世界でのコラボレーション、三次元空間での描画やもの作り、ちょっとした手直しといった力が失われてしまうのだ。
リモートワークに向かう流れが世界的に強まる中、ホログラフィック技術を用いたコラボレーションは将来的に有望なソリューションだ。この種のアイデアで最も説得力があるのは、VRヘッドセットを装着することで、世界各地の同僚とシームレスな形で場を共有し、対話や、アイデアの共有、プレゼンテーション、コラボレーションが可能になるという点にある。このコンセプトは、多くの大手企業がテストしたいと考えるだけの魅力を持っている。
Spatialの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のAnand Agarawala氏は、「2019年には、Fortune 1000の25%を超える企業からAR/VRにおけるコラボレーションに向けた強い要望があり、われわれはMattelやNestle Purina PetCare、BNP Paribasといった第1陣となる顧客を発表した」と述べた。