ITディレクターの将来のキャリアパス
Delaney氏もそうだが、多くのITディレクターはIT部門のたたき上げだろう。コーディングやソフトウェア開発者からスタートして、チームの責任者になり、ITプロジェクトの管理を経験して、最終的にさらに上級のITディレクターの役職にステップアップしている。Harvey NashとKPMGの調査によれば、前職を退職したITリーダーの3分の1近く(31%)は、キャリアアップを理由に挙げている。
ITディレクターの中には、所属会社から昇進を提示されてCTOやCIOになる人もいるが、よいチャンスを得て、まったく別の企業に転職する人もいる。ITディレクターからほかの幹部職に昇進することはまれで、特に最高経営責任者(CEO)に昇進する可能性はほとんどないかもしれないが、テクノロジー主導の企業であればあり得ないことではない。
ITディレクターはCIOの肩書きを目指すべきか
IT担当幹部は、自分が持っている肩書きにとらわれすぎている場合がある。ITを担う幹部職ができたのは比較的最近だが、その役職名の変遷にはファッションの側面がある。最近ではCIOがITディレクターを率いることが増えているかもしれないが、CTOや、最高デジタル責任者や、最高データ責任者などが、IT担当役員としてある程度の縄張り持っていることもある。
役職の責任範囲が頻繁に分割され、変わり続けることは、IT担当幹部の認知度を高める上であまりプラスにならない。以前は単に組織内のサービス提供が仕事だと見られていたITディレクターにとって、取締役会のメンバーから敬意を勝ち取ることは大変な仕事だった。ITディレクターはこれまで、テクノロジーに関する問題だけでなく、ビジネスの重要性も理解していることを示すために努力してきた。
経歴書にどんな役職名を載せるのが有利かを心配するのは、多くの場合ささいな問題だ。ビジネスリーダーとして成功したければ、本当に重要なのは、職務記述書に何と書かれているかではなく、実際に何をしているかだろう。Delaney氏のような賢明なIT担当幹部は、チャンスがやってくるのは、肩書きにかかわらず、組織のデジタルトランスフォーメーションに貢献している人間だと理解している。
ITディレクターはCIOを目指しているのか
Harvey NashのHaake氏によれば、同氏が知るITリーダーの多くは、世間の想像とは違い、最初に「C」がつく肩書きにはあまりこだわっていないという。そのことはHarvey Nashの分析でも示されていると同氏は話す。「一部の人はCIOの肩書きを持つことは魅力的だと考えているが、実際には、与えられる権限の方が重要視されている。私たちは、肩書きが『C』ではなく『lead』から始まる、給与が最大で70万ドル(約7500万円)程度の役職の人材もリクルーティングしている」と同氏は言う。