Dropbox API連携の仕組み--自動で連携するメリット

岡崎隆之 (Dropbox Japan)

2021-05-24 07:00

 前回はAPIと「Dropbox API」の概要を紹介しました。第2回目となる今回はDropboxがどのようにAPIを利用しているか、またDropboxユーザーによるDropbox APIの活用事例をいくつか紹介しながら、その背後にAPIがどのように関わっているかを紹介します。

APIの使われ方

 API(Application Programming Interface)はアプリケーションを設計、実装する際の基本的な仕組みとして使われることがあり、説明する背景によってそれぞれ少し性格が異なります。APIの定義はかなり広いのですが、活用するという視点では大まかに次の2パターンに分類できます。

  1. APIを公開しておらず、サービス提供者の内部のみで利用しているもの (非公開API)
  2. APIの仕様を公開している、利用契約があるなど、一定の条件のもとで使えるもの (公開API)

 まず、サービス提供者の内部のみで利用している例から順番に紹介します。

 サービス提供者の内部で利用している非公開APIは、ユーザーである我々がアプリケーションやサービスを利用する裏側で利用しているものです。非公開であってもAPIとして定義しているのはアプリケーションの設計手法などで少しずつ異なりますが、大まかにはサービスを機能の単位に分割し、より開発や保守、運用の柔軟性、効率性、保守性、堅牢性を高めるためです。

DropboxはどのようにAPIを使っているか

 下の図1は、Dropboxのサービスを構成しているシステムの構成図です。システムはいくつかの機能単位で分割し、それぞれの機能ごとをつなぐ矢印がAPIを実際に利用している部分です。ファイルのアップロード、ダウンロード、プレビュー表示、検索などの操作はすべてAPIとして定義しています。

図1 図1
※クリックすると拡大画像が見られます

 たとえば、ファイルデータを格納する、取り出すといった処理(図のBlock Storage Servers)は、プレビュー処理(図1のPreviews Servers)やブロック処理(図1のBlock Servers)が利用しています。この際のデータ格納、取り出しといった操作がAPI仕様や手続きによって決められています。

 これらのAPI仕様や手続きを満たしていれば、API利用者であるプレビュー処理やブロック処理からみて変化はありませんからBlock Storage Serversを別のソフトウェアに置き換えるといった開発、運用も可能です。

 Dropboxではほとんどの場合、データを米国の自社データセンター(DC)で管理していますが、法人向けの「Dropbox Business」では日本の顧客向けに日本のDCを選択できる仕組みがあります。これは裏側でデータを管理している処理を米国から日本に切り替えることで実現しています。背景にBlock Storage ServersというAPIの仕様や手続きの定めがあり、利用者(この場合プレビュー処理やブロック処理)は影響なく活用できます。

 Dropboxではこのような内部で利用するAPIは公開、個別提供していませんが、このようなサービスの部品をAPIとして提供しているサービス事業者もあります。これらの事業者はIaaS(Infrastructure as a Service)とよばれ「Amazon Web Services(AWS)」「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform(GCP)」などが有名です。

 APIという考え方は古くからあるのですが、近年よく言葉が使われるようになったのは技術的、性能的に利用しやすくなったこと、利用条件やライセンス体系などもより柔軟になったことが理由としてあげられます。

 さらに、サービスの部品APIを提供する事業者、サービスの一部をAPIとして提供する事業者、またこれらのサービス同士をつなぎ合わせるためのサービスがそれぞれ無理のない投資範囲で小規模に始められるようになったことも大きな要因です。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  2. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  3. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]