データセンターの自動化は、「Hardware as a Service」(サービスとしてのハードウェア)モデル、クラウド化、マルチクラウド化、機動性への要求といったさまざまなトレンドによって今後ますます加速していく可能性が高い。そして、これらのトレンドはすべて融合しつつある。
米ZDNetがデータセンターの自動化の状況に注目し始めた2018年頃の流行語は、「ソフトウェア定義」と「デジタルトランスフォーメーション」だった。しかし米TechRepublicが当時実施した調査によれば、回答者の60%はデータセンターの機能の自動化をまったく行っていなかった。
しかしこの3年の間に、コロナ禍によって状況は大きく変わった。
今やデータセンターの自動化は、マルチクラウド化やパブリッククラウド化、Hardware as a Serviceモデルや、機動性を実現するための自動化といった一連のトレンドの中心に位置している。簡単に言えば、データセンターの運用自動化に向け、大変な勢いで進んでいるということだ。
Gartnerは、2025年までに企業の60%がコンピュートリソースのデプロイメントに自動化ツールを利用するようになると予想している。またIDCによれば、Global 2000企業のIT組織のうち75%は、需要増に対応するために、2023年までに運用の一部を自動化する見込みだという。
しかしこれらの予想は保守的すぎるかもしれない。なぜなら、今ではデータセンターを自動化するために必要な作業の負担を、顧客ではなくベンダーが担うようになっているからだ。
3年前には、データセンターの自動化に投資を行う主体は企業だと考えられていた。しかしその後、コロナ禍によってクラウドコンピューティングの導入が急速に進み、マルチクラウド環境が当たり前のようになってきている。例えば次のような現状がある。
クラウドベンダーがデータセンターの自動化を進めてきた理由は単純で、自動化によって利益率が上昇するためだ。顧客企業がデータセンターの自動化にこぎ着けることと、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudなどの大手クラウド事業者がデータセンターの自動化を進めることの背景にある論理はまったく異なる。大手クラウド事業者は、自動化を進めれば進めるほど、サービスの価格を下げつつ自動化による経費削減分だけ利益を増やすことができるからだ。ちなみにGartnerは、世界でエンドユーザーのパブリッククラウドサービス支出は2021年中に約23%増加して3323億ドル(約36兆円)に達すると予想している。
古くからのデータセンター機器ベンダーであるCiscoやDell Technologies、Hewlett Packard Enterprise(HPE)などの企業は、いずれもHardware as a Serviceモデルに移行しようとしている。このサービスモデルでは、ベンダーが自社の機器を管理するようになる。つまり、自動化が進めばオーバーヘッドが減り、利益幅が大きくなるということだ。Gartnerは以前、2022年までに、オンプレミスコンピューティングの新規導入事例のうち15%が、従量課金モデルが絡むものになると予想していた。