ノーコードサービスの可能性と限界--アプリを作成してツールの違いをみる - (page 4)

石田健亮 (ドリーム・アーツ)

2021-05-31 07:00

 また、SmartDBはワークフローエンジンを備えている。文書が起票されてからの状態遷移を、ボタンをクリックした際の処理を設定するという方法で定義することができる。

 例えば、ボタンをクリックしたときに「ステータス」という部品の値を「完了」にするといった具合だ。(図11

図11 図11
※クリックすると拡大画像が見られます

 組織マスター情報と組み合わせることで、簡単なフローからエンタープライズレベルで求められるかなり複雑なワークフローであってもノーコードで実現できる。

 SmartDBは、社内の組織情報、ユーザー情報をもち、複数のバインダ(データベース)を連携することができるという点で、企業における業務のデジタル化への親和性が高いツールだ。

 ITプロフェッショナルはもちろん、一般の現業部門のスタッフであっても十分に活用可能であり、事実、ユーザー事例でもITの専門知識がなくても業務がデジタル化できたという声が寄せられている。

 今回はノーコードと呼ばれる製品のうち代表的なものとして、ウェブ/スマホアプリ型からウェブアプリ作成ツールのbubble.ioを、データベース+ワークフロー型からSmartDBを取り上げ、具体的にアプリを作成してみた。

 ノーコードツールといっても、タイプによってその対象とするユーザー、アプリケーションの特性、設計思想などまったく異なることがわかっていただけたかと思う。

 ウェブ/スマホアプリ型は、UIやロジックに関しての自由度が高く、従来のコーディングによるアプリケーション作成と遜色ないレベルでアプリを作り込むことができる。社内での利用ではなく一般に公開するアプリを開発するには、このタイプのノーコードツールが最適だ。弱点は、コーディングは不要になったものの、システムの設計、構築に関する知識や経験がなければ現実的にアプリケーションを構築するのが難しいという点だ。ITプロフェッショナルのための電動工具という位置付けになる。

 一方、データベース+ワークフロー型は、デジタルの民主化を体現したツールだ。専門知識がなくても、実現したい業務知識さえあれば誰でも業務をデジタル化することができる。企業における利用にフォーカスしているため、組織やユーザーのマスター、権限の管理といったレイヤーは標準で用意されており、ユーザーは実現したい業務のことだけを考えればいい。

 いずれのタイプにしても向き、不向きがあるので解決したい課題にあわせて適切なツールを選択することが重要だ。

 次回は、データベース+ワークフロー型ノーコードを利用した企業における業務のデジタル化の成功事例として、SmartDBのユーザーであるヨネックスに話を聞く。

(第3回は6月中旬にて掲載予定)

石田 健亮(いしだ けんすけ)
ドリーム・アーツ 取締役執行役員 CTO
1998年、東京大学工学部機械情報工学科卒。東京大学大学院在学中の2000年4月にドリーム・アーツに入社。製品開発部長を経て、新規事業推進室にて現在3万9000店舗以上に利用されている「Shopらん」の企画開発を手がける。2015年1月、最高技術責任者に就任。「ものづくりの力」を強化すべくエンジニアの育成にも注力している。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Google Chrome Enterprise が実現するゼロトラスト セキュリティの最新実情

  2. ビジネスアプリケーション

    ITSMに取り組むすべての人へ、概要からツールによる実践まで解説、「ITSMクイックスタートガイド」

  3. セキュリティ

    あなたの会社は大丈夫?--サイバー攻撃対策として必要な情報セキュリティの早分かりガイドブック

  4. ビジネスアプリケーション

    業務マニュアル作成の課題を一気に解決へ─AIが実現する確認と修正だけで完了する新たなアプローチ

  5. セキュリティ

    いまさら聞けないPPAPの問題点、「脱PPAP」を実現する3つの手法と注目の"第4のアプローチ"とは

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]