バックアップからデータポータビリティーやPlatformOpsに--Veeam首脳陣が明かす戦略

三浦優子

2021-06-01 06:30

 Veeam Softwareは、5月に開催した年次カンファレンス「 VeeamON 2021」で、2021年に目指す方向性を紹介、最新テクノロジーに対応したデータバックアップソリューションを提供してきた同社だけに、新しいITトレンドを積極的に取り入れていることが特徴となっている。ここで発出した幾つかのキーワードについて同社首脳陣がインタビューに応じ、解説した。そこから見えるデータを取り巻く新しいトレンドなどをレポートする。

新しい技術と使い方への対応

 Veeam Softwareはどう変わっていこうとしているのか――CMO(最高マーケティング責任者)のJim Kruger氏は次のように説明する。

 「データバックアップがわれわれのビジネスのコアであることは変わりない。ただ、新しい事例として顧客ニーズに合わせて機能拡張を進める中で、われわれが新たな役割を果たすようになってきた。例えば、われわれはセキュリティベンダーではないが、ランサムウェア対策に活用できるソリューションを提供している。新しい技術に対応してデータを守ることを進めた結果、データポータビリティーの実現といった新たなニーズに対応できるベンダーとなった」

Veeam Software 最高マーケティング責任者のJim Kruger氏
Veeam Software 最高マーケティング責任者のJim Kruger氏

 こうした技術の進化に伴う用途の拡大に対応できるよう、ライセンスにも柔軟性を持たせるようにしているという。「顧客ニーズをきちんと捉え、対応しているからこそ、われわれが提供するソリューションが新しい用途にも使われるようになってきている」とKruger氏は話す。

 現在の顧客が40万社という同社は、技術進化として確実に起こっているKubernetesやDevOpsへの移行にも対応できる技術を備えていることが大きな強みだとする。「率先して最新技術に対応し、顧客の心をつかむ努力をしている」(Kruger氏)と、ユーザーの声を聞きながら技術進化を欠かさないことを強調した。

 日本では、5月にデル・テクノロジーズがデータ保護ソリューションを提供するなど、従来の競合に加え、新しい競合も加わっている。「われわれは、まず使って良さを理解してもらえるようフリーミアムモデルを提供するなど、顧客接点を得るためのさまざまな方法を提供し、競合が増えても十分に戦っていけるだろう」と同氏は自信を見せた。

データポータビリティーの確保はユーザーの自由度を上げる

 Veeamのプレゼンテーションでは、「データポータビリティー」というキーワードが何度も出てきた。エンタープライズ戦略担当バイスプレジデントのDave Russell氏は、これがユーザーの声を聞く中で重要度が増した機能だったと話す。

Veeam Software エンタープライズ戦略担当バイスプレジデントのDave Russell氏
Veeam Software エンタープライズ戦略担当バイスプレジデントのDave Russell氏

 「顧客から聞くうちに、自社にとって最適なシステムで利用するためにバックアップデータのポータビリティー機能を使っていることが分かった。これはコロナ禍で多くの企業が何らかの変更を強いられたことに起因している。場面に応じて適切なシステムを選択する企業が増えた」

 コロナ禍の影響によるシステム変更と聞くと、オンプレミスのデータをクラウドに移行させることを指すのかと思いがちだが、必ずしもそうではなく、逆にクラウドからオンプレミスへ移行するケースもあるという。

 「クラウドが登場した頃は、『オンプレミスではなくクラウドを使えばコストを下げられる』と言われていた。ところが、実際には必ずしもオンプレミスよりコストを下げられるばかりではないことが明らかになった。用途や利用期間によってはオンプレミスの方がクラウドよりもコストを抑えることができるケースもある」

 クラウドよりオンプレミスの方がコスト抑制になる点もあると分かれば、データを移行してコストを抑えるオンプレミスへ移行するユーザーがいるというのは興味深い。このように、オンプレミス、クラウド、さらに好みのストレージを能動的に選択するユーザーが増えているそうだ。

 「私は現在でもテープメディアを素晴らしいと思っている。しかし、全てのデータの保存先をテープにすれば良いというわけではない。用途に合った適切なメディアを選択すべきで、それをきちんと理解している顧客が増えているようだ」

 データを自由に動かすポータビリティーが確保されていれば、特定のベンダーにロックインされることもなく、古いシステムを使い続ける必要もない。データポータビリティーを活用するユーザーが増えているという点は、ユーザーが主体的にシステムを使い続けるという観点でも意識しておくべきといえそうだ。

 もう一つ、米国でパイプラインの操業停止という大事件の発生までに至ったランサムウェアへの対策についても尋ねた。同社にとっても、ランサムウェア対策は重要な課題となっている。

 「残念ながら、万全のランサムウェア対策は無い。対策方法はベストプラクティスを学び、さまざまな方法をとる必要がある」と、Russell氏は慎重な見方を示す。

 同社のバックアップソリューションでは、データに何らかの異常が起きた際に、変化をいち早く発見できることが多いという。「例えば、毎晩のバックアップ処理がいつもより長時間を要していたら、何か異変がないかチェックすべきだ。きちんとバックアップしデータを守ると同時に、変化の発見を習慣付けることがランサムウェア対策の第一歩になる」とアドバイスする。

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