多くの国ではオフィス再開の準備が一斉に進んでおり、18カ月の在宅勤務を経てオフィスでの仕事に戻ろうとしている企業の従業員も多い。移行後はハイブリッドワークが新しい働き方の常識になると予想されているが、この壮大な実験が始まる前に、実験で検討すべき疑問についてまとめておくべきだろう。
ハイブリッドワークは新たな働き方の常識になると考えられている一方で、Morgan StanleyやGoldman Sachsなどのように、米国で従業員を再びオフィスに戻す考えを示していた企業も一部存在する。
この2つの大手金融機関が出していた指示は、要するに「オフィスに戻ってきなさい」というものだった。Morgan Stanleyは6月、新型コロナウイルスワクチンを接種していない従業員がニューヨーク市などのオフィスに戻ることを禁じると報じられた。ニューヨーク都市圏の全スタッフはコロナワクチン接種の状況を証明する必要があるとされた。Goldman Sachsの従業員もワクチン接種の状況を明らかにするよう求められたという。Morgan StanleyやGoldman Sachsのアプローチがどのくらいうまくいくのか、そして、最終的に何人の従業員が競合企業に引き抜かれるかはいずれ明らかになっていくだろうが、これらの企業の選択は、幅広い選択肢の中の一方の端に位置するものだと言える。これらの企業とは対極的な選択をしているのがAtlassianなどの企業で、同社はリモートワークのDNAを最大限に生かして、他社から人材を引き抜こうと目論んでいる。そして、残る多くの企業のハイブリッドワークに対するアプローチは、この両極端の間のどこかに位置することになるだろう。
別の言い方をすれば、2021年の残りの期間は、ハイブリッドワークや仕事の生産性、従業員と雇用主の間のレバレッジとマネジメントに関する壮大な実験として見ることができるともいえる。
ここで、興味深いデータをいくつか挙げてみよう。
- TinyPulseが企業の人事部門の責任者を対象として実施した調査によれば、回答者の62.8%は、所属企業で従業員の全体的なパフォーマンスを最適化する働き方はハイブリッドワークだと考えていた。
- Microsoft Researchの調査によれば、世界の労働者の40%以上が、2021年中に現在勤務している企業を退職することを検討していた。一方、TinyPulseの調査では、回答者の68%以上が、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための規制が解除された後の離職率は0~9%になると予想している。これらの数字にはかなりの差がある。
- Global Workplace Analyticsは、2021年末までに労働者の25~30%が1週間に2日以上在宅勤務を行うようになると予想している。