Cisco Systemsは米国時間10月26日、拡張現実(AR)を同社のコラボレーションプラットフォームにもたらす新たなサービス「Webex Hologram」を発表した。ユーザーはビデオ会議の際に、Webex Hologramと「Magic Leap」や「Microsoft HoloLens」といったARヘッドセットを利用することで、写真のようにリアルで実際の人物のホログラムのような映像をリアルタイムでやり取りできるようになるという。
提供:Cisco
コロナ禍でオンラインコラボレーションツールの必要性が高まるかな、Ciscoはこの1年、Webexのポートフォリオを大幅に改善してきた。同社はホログラムを利用することで、よりリアルで魅力的なエクスペリエンスを実現すると述べている。
Ciscoは米ZDNetに対して、ホログラムのようにリアルな映像を支えるテクノロジーについて説明した。
- クラウド上でのレンダリング(描画)技術が実現されている。これにより、ライトフィールド(光線場)を部分的にクラウド上でレンダリングしておき、最終的な調整をヘッドセット側で実施できるようになる。ヘッドセット側で対象を迅速に更新することが可能になり、他の方式で発生しているような乗り物酔いのようなエクスペリエンスを除去できる。またこの技術によって、ヘッドセット側での計算処理の大幅な削減と、コンピュート能力の最適化が可能になる結果、ヘッドセットの制約に縛られずに、クラウドサーバーのフルパワーを活用した優れたエクスペリエンスを実現できる。Webex Hologramはこの革新的なレンダリング技術により、LTEを含む今日のインターネット上で快適に動作する。
- ライトフィールドの捕捉を容易にするイノベーションとともに、インターネットを介したライトフィールドの圧縮と送信を可能にするイノベーションが実現されている。Ciscoの圧縮技術によって、捕捉したライトフィールドのクラウドへのアップロードと、クラウドからヘッドセットへのダウンロードが従来のブロードバンド接続の帯域幅で可能になっている。
- ホログラムのような並外れた品質を実現できるレベルのライトフィールドを補足できる。ライトフィールド自体は新しい考え方ではないものの、これによってボリュメトリックビデオを上回る利点がもたらされる。例えば、ライトフィールドビデオでは現実世界と同じように、対象物をさまざまな角度から見た際の色の変化を再現できる一方、ボリュメトリックビデオでは同じ色で表現されるのが一般的となっている。この違いにより、Webex Hologramのライトフィールドビデオでは、人間の目といった、光を反射して輝いているようなものの表現能力が向上している。
Webex Hologramは現在、パイロットプログラムで一部の顧客のみが利用できるようになっている。Ciscoは現在、プログラムを利用する顧客のユースケースや応用事例を見いだすとともにフィードバックを取り入れようとしている。その後、ベータサービスを拡大する計画だ。
多くのワーカーがビデオ会議疲れに不満の声を上げている中、従業員や雇用主がハイブリッドワークモデルを求めるのであれば、複合現実(MR)のコラボレーションはその促進に役立つとCiscoは考えている。
Ciscoのセキュリティとコラボレーション担当エグゼクティブバイスプレジデントJeetu Patel氏は、「Ciscoにおける私たちのミッションは、世界のデジタルワーカー30億人が世界中のどこからでも等しく参加できるようにすることだ」とし、「Webex Hologramは、オンラインと対面のコラボレーションで差がないほどのシームレスなワークエクスペリエンスを提供するという当社のミッションに向けた大きなステップとなる」と述べている。
このツールは、現場などで手に触れる物を使って実際に操作するような協業が必要なチームで特に役立つとCiscoは述べている。例えば、医療用機器のメーカーが新製品を開発する場合、企業はWebex Hologramを利用し、素早く訓練する必要のある医師や技術者、セールスチームに紹介することができる。
レーシングチームのMcLaren Racingは、このサービスを試用しており、設計エンジニアやドライバー、クルーにとってこれは「パワフルなツール」だと述べている。
McLaren Racingの最高経営責任者(CEO)Zak Brown氏は声明で、「技術者をレーシングチームの元に派遣したり、平面図を用いて手順を説明するのではなく、Webex Hologramを用いることで、そこに技術者が実際にいるかのように、エンジン部品をさまざまな角度から即座に示し、大きさを伝え、組み立てや使用法について指示できるようになる。また、移動時間も大きく減らせる」と述べている。
Webex Hologramにより会議の参加者らは物理コンテンツとデジタルコンテンツの双方を共有できるようになる。また、「1対多」という発表形式のエクスペリエンスもサポートしているため、それぞれの聴衆が多元的なエクスペリエンスを同時に得られるようになる。さらに同製品では、さまざまなヘッドセットが利用できるようになっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。