Sansanが11月10日に開催したオンラインイベント「Sansan Innovation Summit 2021」に西日本電信電話(NTT西)が「顧客中心主義への挑戦」と題した講演に登壇した。NTT西が提供するビジネスチャットツール「elgana(エルガナ)」は、プロジェクト開始から約2年で利用IDは100万を突破し、大企業ながらもアジャイルな開発に成功したという。

NTT西日本 elganaプロジェクトエバンジェリスト 広瀬丈氏
NTT西 elganaプロジェクトエバンジェリスト 広瀬丈氏は「現在のelganaはビジネスチャットツールだが、今後は業務システムのインターフェース、さらに社内の事象を読み取るセンサーを目指す」と今後の展望を語った。
学習と改善を繰り返す文化を身に付ける
NTT西は従来の電気通信業務から、顧客中心主義に舵を切っている。「顧客需要動向が予測できない速度で変化する現代において、すべての答えは顧客の中にある。新たな価値を創造するカギは顧客理解であるとの判断から取り組みを開始した」(広瀬氏)
elganaは、2019年10月に開発プロジェクトを開始し、3カ月後の2020年1月には、NTTグループ20万人を対象にした社内試験運用に着手。同じく3カ月後の2020年4月に一般市場へ提供を開始した。広瀬氏は「日本の大手企業のイメージとは異なるスピード感をもって多くのことに挑戦した」と当時を振り返る。
同社がビジネスチャートツールを運用する理由は、「顧客の承諾を得た上でelganaから得た企業の特性指向や課題データの分析結果、NTTグループの各種サービスに提供し、経営改革を支援する」(広瀬氏)ためだ。このデータ精度を高めるために用いられているのが、名刺管理サービス「Sansan」をはじめとする顧客管理システム(CRM)である。
elgana開発プロジェクトについて広瀬氏は、事実上の標準を採用した「守」、独自エッセンスを注入した「破」、新たなモデルを創造する「離」の3段階に分類した。
「『守』の段階では、SaaS各社のデファクトスタンダードを身に付けるため、アジャイルやDevOpsといった開発手法、営業プロセスモデルは『The Model』、ツールは『Sansan』『Salesforce』などを採用。Sansanはデジタルマーケティング領域に位置し、既存人脈情報をマーケティングと営業プロセス連携に用いた。Sansanはビジネスを円滑に回すために重要な役割を果たしている」(広瀬氏)

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elganaは2020年10月から、NTT西のビジネスとしては初のフリーミアムシステムに切り替えた。2020年8月~2021年11月の1年3カ月間、elganaに関わるすべてのシステム改善に取り組んだ期間が「破」にあたる。
「契約ID数など定量的な事業目標を定め、目標達成に向けて各チームが実施すべき施策を策定。さらに目標施策と整合するための個人目標にブレイクダウンしている」(広瀬氏)
各施策の進捗はダッシュボードで可視化し、現状と目標の溝を埋めるための活動につなげ、期末などのタイミングで戦略や施策を見直している。その結果として「顧客の声を反映し、学習と改善を繰り返す文化を身に付け、elganaに関わるすべての範囲を改善」(広瀬氏)する成果を得たという。
elganaはコミュニケーションの効率化や活性化を目的としたビジネスチャットツールだが、次の段階では「あらゆる業務のプロダクト、サービス、システムと連携させ、多くの業務効率化を実現したい。そのプロダクトの1つはSansanソリューションであり、名刺管理人脈設定の管理とチャットの連携による効率化を模索している」(広瀬氏)
さらに広瀬氏は「最終的には顧客企業の社内で発生する事象を読み取るためのセンサーを目指したい。経営層には意思決定用データを提供し、従業員には自身の働き方をより良くする提案を行う。日本社会全体のウェルビーイングを実現するプロダクトを目指したい」と今後の目標を語った。