インターネットのささやかな始まりは、ある実験にまでさかのぼることができる。この実験がやがて、私たちの交流、買い物、学習、仕事のやり方に革命的な変化をもたらし、世界中のあらゆる場所のあらゆる人間があらゆる話題について情報を受け取ることのできるデジタル空間になった。World Wide Webは無限の可能性の源となり、コミュニケーションのグローバル化という明るい未来を示した。
Web 1.0から始まって、次にWeb 2.0が登場した。現在はWeb3が始まろうとしているところだ。これはインターネットの新しい時代であり、支持者たちは、これまでに見たことのないものになると主張している。Web3は自由で分散化されており、政治や巨大テクノロジー企業の金銭的な思惑の影響を受けないという。
Web3の背景にある考えは、仮想通貨(暗号資産)や非代替性トークン(NFT)などのブロックチェーンテクノロジーをデジタル世界の基礎構造に組み込むことだ。メタバースの導入など、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)も関わってくる。Web3の支持者は、ブロックチェーンが信頼性と透明性のある方法でデータを追跡し、インターネットをあらゆる人にとってよりアクセスしやすい空間にする可能性があると考えている。
これは少なくとも楽観的な見方だ。
しかし、インターネット上では、有益な可能性を秘めたあらゆるものが、悪意をもって利用されるおそれがある。現在と同じように、次のバージョンのウェブも引き続き、犯罪者による巧妙な詐欺、嫌がらせ、虐待、偽情報、なりすましを可能にし、それがかつてない規模に拡大するかもしれない。
World Wide Web FoundationでOpen Data Collaborativesのエグゼクティブディレクターを務めるKat Townsend氏によると、World Wide Webが今後直面する最大の問題の1つは「スプリンターネット」の出現だという。スプリンターネットは断片化されたインターネットであり、これを構成する個々の要素が、国家とユーザー間の情報の自由な流れを遮断する。
断片化されたウェブでは、ユーザーがオンラインでやれることとやれないことを、国家が決定できる。政府は通常、国家安全保障上の懸念を理由に、ウェブの断片化を正当化する。たとえば、米国は中国製アプリ「TikTok」を禁止しようとした。多くの場合、ウェブの断片化は、政府が政治論に対するインターネットの影響を抑える手段として使用される。
断片化は、国際協力と情報の自由な流れを著しく阻害する。Townsend氏によると、企業がプライバシーと断片化の懸念に対処する責任を負うだけでは不十分だという。成果を上げるためには、ポリシーの策定に共同で取り組まなければならない。
「断片化の拡大は、オンラインのプライバシーと安全に対する真の脅威だ」。Townsend氏は米ZDNETにこう語った。「(プライバシー)ポリシーを作成する場合、どのような形で策定または施行されるのだろうか。これらのポリシーの共同作成が拡大することを望む。基本的に、安全なウェブを実現するには、複数のパートナーや組織と共同で開発したポリシーが必要だ」
ブロックチェーンと仮想現実の技術にも落とし穴がある。ブロックチェーンが巨大テクノロジー企業の問題に対する魔法の解決策だという主張は、この技術の負の側面を過小評価している。たとえば、仮想通貨のマイニングは自然環境に大きな負担をかけるほか、一攫千金をうたう詐欺の温床になっており、現状では、このテクノロジーは期待に応えられていない。