インターネットの未来

アンビエントコンピューティングとは--IoTとの違いやユースケースなどの基本を解説

Sabrina Ortiz (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2022-10-12 07:30

アンビエントコンピューティングを簡単に説明すると

 アンビエントコンピューティング(ユビキタスコンピューティングという名称も広く知られる)とは、コンピューティングパワーを日常生活に融合させ、目には見えないが便利に使えるように、周囲の環境に組み込むという概念のことだ。

 その目的は、テクノロジーの利用に伴う摩擦を減らし、キーボードやスクリーンを気にせず、テクノロジーを簡単にフル活用できるようにすることにある。さまざまなコンピューティングデバイスを直接操作して意図した結果を得るのではなく(たとえばスマートフォンを用いた通話やリモコンによるテレビの電源投入ではなく)、アンビエントコンピューティングでは、すべてのデバイスがシームレスに連携してユーザーのニーズに応える。

 「マルチデバイスの世界において、テクノロジーに悩まされながら送る生活は望まれていない。アンビエントのアプローチなら、必要な助けを受けながらも、テクノロジーに邪魔をされずに自分の生活を送れるようになる」。GoogleのシニアバイスプレジデントであるRick Osterloh氏はGoogle I/O 2022の基調講演でこのように述べた。「どんなデバイスを使うか、どのような状況にあるのか、あるいは音声か、タイピングか、タップなのかは、重要ではない。生活の中のテクノロジーがシームレスに連携する」

アンビエントコンピューティングと呼ばれる理由

 「アンビエント」という言葉の定義が示唆するように、アンビエントコンピューティングとは、環境に溶け込み、ユーザーが促さなくてもいつでも支援を提供できるテクノロジーを指す。たとえばスマート温度計は、ユーザーが温度を下げなくても、学習したパターンに基づいて自動的に適切な温度に調整することができる。ここから「スマートホーム」という概念が生まれた。スマートホームでは、家の中のあらゆるものにテクノロジーが組み込まれ、ユーザーが日常的な作業をこなす方法を最適化する。

よく似ているように思えるIoTとの違い

 モノのインターネット(Internet of Things:IoT)とアンビエントコンピューティングがよく似ていると思うのは、間違いではない。これら2つの概念は密接な関係にある。IoTとは、スマートセンサーやスマートスピーカーなど、インターネットに接続して機能を最適化する多様なデバイスを指し、アンビエントコンピューティングはその上に構築されるものだ。

 「IoTはアンビエントコンピューティングの基盤を形成する。アンビエントコンピューティングは、デバイスやインテリジェントサービスとユーザーのやりとりに重点を置いている」。調査会社Canalysでプリンシパルアナリストを務めるJason Low氏は、米ZDNETにこのように語った。

 アンビエントコンピューティングは、これらのデバイスが接続されたときのやりとりに重点を置いているともいえる。たとえば、アプリに接続する電球はIoTデバイスだが、電球がどのようにしてユーザーの好みに関するデータを周囲の環境から収集し、それに応じて動作するのかは、アンビエントコンピューティングが対応する領域だ。

 「モノのインターネットは、デバイスに組み込まれて物理的および機能的に世界とやりとりするセンサーやアクチュエーターによって存在している。アンビエントコンピューティングはこの通信を中核に据えて、その環境をビジネスプロセスと洞察のために利用する」とコンサルティング会社Deloitteは説明した。

アンビエントコンピューティングの現状

 スマートホーム内のあらゆるデバイスや表面がアンビエントコンピューティングの例になり得るが、この分野で現在最も優勢なテクノロジーは、音声アシスタントだ。「Amazon Echo」「Google Nest」などのスマートスピーカーや、Microsoftの「Cortana」などのアシスタントは、人工知能(AI)を使用して、要求されたタスクを実行する。

 スマートスピーカーは、よりシームレスに環境に溶け込むように、ミニマリスト的なデザイン、色、サイズを採用していることが多い。デバイスを手に取って何かを指示する必要はなく、周囲の環境に向かって声を出すだけで、タスクを遂行することができる。

 これらの音声アシスタントで実行できることは増え続けている。音声アシスタントの当初の機能は、天気に関する質問への回答や、楽曲の再生といった範囲にとどまっていたが、現在では、家の掃除、照明の点灯、商品の注文と配送依頼など、非常に多くのことを実行可能だ。

 「アンビエントコンピューティングには3つの構成要素がある。トリガーとなるセンサー、データのストリーム、そのデータを処理するCPUだ」とDeloitteのNSEマーケティング&コマースリーダーであるRoyston Seaward氏は述べた。

 アンビエントコンピューティングは、音声アシスタントに加えて、人工知能やセンサー、接続性、クラウドコンピューティングなど、現代のテクノロジーのあらゆる側面を使用する。明白なガジェットに焦点を当てる必要は全くない。コンピューティングパワーがクラウド上にあり、使用される場所では目に見えない場合もある。アンビエントコンピューティングの差別化要因は、ハードウェア自体ではなく、テクノロジーをどのようにプログラムして使用するかという点だ。

その他のアンビエントコンピューティングの例

 アンビエントコンピューティングは、スマートホームだけでなくビジネス運営も支援することができる。パンデミックによって企業の経営が変化し、今も多くの職場でハイブリッドワークモデルが採用されている。

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