米ZDNet編集長Larryの独り言

アマゾン「Alexa」はよりスマートに、アンビエントに--オフィス環境への適用にも期待

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2020-09-29 06:30

 Amazonは同社の音声アシスタント「Alexa」をよりスマートにしようとしている。具体的には、言葉を話すタイミングを自然なかたちで捉えたり、複数の人との会話をこなしたり、自然言語を理解したり、ユーザーから教わる能力を獲得する。当初の目標はスマートホームだが、「Alexa for Business」も後に続きそうだ。

Meet Alexa and the new Echo brain.
「Alexa」と新しい「Echo」を支えるニューラルエッジプロセッサー「AZ1」の特長
提供:Amazon

 Amazonは先週、スマートスピーカー「Echo」の新シリーズを発表するとともに、Alexaの刷新と人工知能(AI)の強化についての概要を説明した。

 新しいEchoは、スマートホームにおけるエッジコンピューティングデバイスという方向に進化している。例を挙げると、Echoは同社の新しいニューラルエッジプロセッサー「AZ1」を搭載しており、前世代比にして20倍の低消費電力化を実現する一方で、音声処理のパフォーマンスを2倍に強化し、メモリー消費量を85%削減している。

 このプロセッサーと、同社の誇るAI能力により、Echoはさらに環境に溶け込むことを目指している。同社でデバイスおよびサービス担当シニアバイスプレジデントを務めるDave Limp氏によると、新しいEchoは「機会を重視する」ようになっているという。

 同社は、子どもの読書を支援する「Reading Sidekick」をはじめとする機能や、会話能力の向上により、「Alexa」と何度も呼びかけなくても済むようにするとともに、Alexaを家族の一員のようにすることを目指している。

 同社でAlexaのAIを担当するバイスプレジデント兼サイエンティストリーダーのRohit Prasad氏は、Alexaの以下の機能について概説した。

  • ユーザーとのやり取りの中で手がかりを見つけ、自らの間違いを認識し、その間違いを正そうとする。
  • 返答や、学習したモードに関する知識が不足している場合、追加の質問を投げかけることで人間から学習する。
  • 深層学習(DL)の活用により、間を理解し、新たな文脈を読み取る。
  • より自然に会話し、適応する。
  • 人間とやり取りする際のフォローアップモード。

 Prasad氏は、Alexaが視覚と音声からの手がかりを用いて最善のアクションを決定できるとし、「会話の中で言葉を話す自然なタイミングを捉えるという能力により、人々は自らのペースでAlexaとやり取りできるようになる」と述べた。

 Prasad氏はインタビューの中で、Alexaに追加された能力はAIの進歩の成果であるとともに、会話テクノロジーからの恩恵を受けていると述べた。今回追加された新たな能力は、それぞれが研究所で月単位から年単位までの期間を要するものだったという。例えば、Alexaの即時学習能力は、開発までに3~4年かかったとされている。

 また同氏は、文脈を解釈し、ユーザーとの話し方に微調整を加えるというAlexaの能力に関して、基本となるテクノロジーを確立するまでに何年もかかったと述べた。

 会話の中で話すタイミングを自然なかたちで捉えるというAlexaの能力には、複数のテクノロジーが必要だったという。例を挙げると、Alexaは音声と雑音を切り分けて言語上の手がかりを得るとともに、可能な場合には視覚的な手がかりも利用するとPrasad氏は述べた。

 Prasad氏は、Alexaの新機能にはAIモデルやソフトウェアによる成果の他に、AmazonのAZ1ニューラルエッジプロセッサーも貢献しているとし、「このデバイス(Echo)に搭載されている同プロセッサーは、テンポの速い会話で重要になる」と述べ、「同デバイスに搭載されているニューラルアクセラレーターによって判断がはるかに迅速になる」と続けた。また、データはローカル環境に格納/削除されるという点で、プライバシーの面でもメリットがある。

Rohit Prasad teaching Alexa.
Alexaにものを教えているRohit Prasad氏
提供:Amazon

アンビエントコンピューティングの追求は家庭から

 Limp氏が概説の中で引き合いに出したのは新しいEchoと「Echo Show 10」だったが、全体を流れるテーマは、このようなデバイスが、人間のようにユーザーの後を追いかけるというものだった。

 また、Alexaとサービスとの相互接続性も強化される。

 その結果、新たなニューラルプロセッサーはすべてローカル環境上で動作するものの、動きの存在を認識することができるとLimp氏は述べた。そして同氏は、「Echo Show」のようなデバイスはスマートモーションに加え、視覚的な手がかりを用いて、ユーザーを中心に据え続けると付け加えた。

 また、「Amazon Chime」や、「Zoom」との統合、グループでの通話といった、ビジネスシーンでの活用も考えられる。

 先週の新しいEchoの発表で中核に据えられていたのは、よりスマートなAlexaと、そのAlexaを家族の一員にするということだった。しかし、次世代の職場環境とハイブリッドオフィスの実現に向け、Alexa for Businessがすぐ後に続くと考えて間違いないだろう。

 Amazonは1年以上前にAlexa for Businessの提供を開始しており、Amazon Web Services(AWS)を介して次々に機能を追加してきている。「Alexa Skill Blueprints」は、誰でもスキルを開発できるようにする目的で2018年4月にリリースされ、2019年にはそういったスキルを「Alexa Skills Store」で公開できるようアップデートされている。

 Prasad氏はAlexa for Businessのロードマップに関する臆測を語らなかったが、EchoまわりのAlexaの新能力は生産性向上とともに、オフィス環境にも適用できると述べた。とは言うものの、Alexaの新機能はまだ明らかになっていないビジネス上のユースケースでも適応できるはずだ。Prasad氏は「Alexaには、基本的に何でも教えられるという点で将来性がある」と述べた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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