伊藤忠商事とスタートアップ企業のIdeinは12月15日、資本業務提携に合意した。Ideinが23日に発表した。この提携により両社は、エッジAI(人工知能)技術を活用し、実空間の行動データを可視化することで、AI/IoT市場におけるエッジ領域の開拓に取り組む。
伊藤忠商事 第8カンパニー GMの中元寛氏(左)、Idein 代表取締役 CEOの中村晃一氏(右)
Ideinは、安価な汎用デバイス「Raspberry Pi」でエッジAI解析を可能にする技術を持つ企業。2020年にはAI/IoTの開発・運用プラットフォーム「Actcast」を開発。同プラットフォームにより利用者は、安価なデバイスで画像や音声の高度な解析が可能となり、システムの導入/運用コストを大幅に削減できるという。Actcastは、大手小売や通信キャリア、鉄道などで利用されている。
少子高齢化が進む日本では、さまざまな業種で人材不足に悩まされている。その対策の一つとして、AIやIoTを使ったサービスに関心が高まっており、市場の成長が見込まれている。だが、AIやIoTの導入にはクラウドにアップロードされるデータへのセキュリティ対策、データ量に比例するコストの増加、プライバシーへの配慮といった課題がある。そうした背景において、利用者や現場の近くに設置した機器でデータを処理し、不必要なデータは取得せずに分析するエッジAIに注目が集まっている。
両社はこれまで、伊藤忠商事グループ最大の消費者基盤「ファミリーマート」と、伊藤忠商事とファミリーマートの合弁会社ゲート・ワンと共同で、ActcastのAIカメラを活用して顧客行動の分析などを行ってきた。
例えば、伊藤忠商事グループは全国34都道府県・合計3000店のファミリーマートの店内にデジタルサイネージメディア「FamilyMartVision」を設置する事業を行っており、その取り組みではActcastを搭載したAIカメラを一部採用し、プライバシーに配慮した広告効果測定の基盤を構築しているという。
FamilyMartVisionの設置イメージ
両社がファミリーマート、ゲート・ワンと共同で既に取り組んでいる、AIカメラを活用した顧客行動の分析などの開発においては、今後FamilyMartVisionをモデルにパッケージサービス化し、スーパーマーケットやドラッグストアなどの小売事業者や他の業態に展開することを予定している。
また同提携を契機に、Ideinの技術力と伊藤忠商事の事業基盤や広範なネットワークを生かし、流通業やサービス業、不動産業や製造業、社会インフラなどの各分野に最適なエッジAIサービスを提供することを目指している。