RSAセキュリティは4月25日に都内で記者発表を開き、同社の新たなオンライン不正対策ソリューションである「RSA FraudAction」および「RSA Consumer Adaptive Authentication」に関する説明を行った。
4月26日、27日に東京プリンスホテルで開催される「RSA Conference Japan 2006」に合わせて来日した、RSAセキュリティ最高経営責任者(CEO)のArt Coviello氏は、冒頭、インターネットにおける環境の変化が、フィッシング詐欺などを横行させている現状に言及。セキュリティ企業がこれに対抗するためには、「外部に存在する脅威への対抗」「個人認証の強化」「トランザクションの保護」といった形で、複数のレイヤに対して防護策を講じる「多層防御」が重要になるとした。また、同社が先日買収を発表した認証ソフトウェアメーカーであるPassMark Securityの名を挙げ、「両社のコアテクノロジーを統合することにより、セキュリティ市場においてより高い地位を獲得できる」(Coviello氏)とし、認証とセキュリティ全般に対する幅広いソリューションを持つ同社の優位性を強調した。
続いて登壇したRSAセキュリティ、シニアバイスプレジデントのNaftali Bennett氏は、フィッシング詐欺が世界的に横行している理由として「詐欺の実行者が、低コストで高いリターンを得られる点が問題」とし、この問題を解決するためには、従来のような受け身の防御のみではなく、より積極的にフィッシング詐欺への対策を行うことが必要であるとした。
同社がネットでサービスを行っている金融機関などに提供している「RSA FraudAction」は、フィッシング詐欺サイトなどの外的な脅威に積極的な対策を行い、サービス利用者の保護を可能にするサービスであるという。
このサービスでは、電子メールなどをはじめとする複数の情報ソースから稼働中のフィッシングサイトを検出し、顧客である金融機関に通知すると同時に、そのサイトが開設されているISPと協力してフィッシングサイト自体のシャットダウンを図る。また、フィッシングサイトにユーザーが入力した情報やページソースを分析することで被害の原因や対策を割り出し、加えてフィッシングサイト自体に架空の情報を大量に送り込むことによって、犯罪者が取得した情報の無価値化を図ると行ったことも行う。
FraudActionでは、顧客に警告情報を送って対策を求めるといった従来の対応方法と比べ、サイト閉鎖などの積極的な対策を講じることにより、効果的に顧客の保護が可能になるとしている。Bennett氏によれば、このサービスによって同社がシャットダウンしたフィッシングサイトは過去1万件以上にのぼり、フィッシング発覚からサイトシャットダウンまでの時間も数時間程度にまで短縮されているという。
FraudActionが「外的な脅威」への防御策であるのに対し、「RSA Consumer Adaptive Authentication」は、「ユーザー認証」部分でのより高度な防御を可能にするものだ。従来からRSAセキュリティが提唱しているワンタイムパスワード技術に加え、このサービスでは「リスクベース認証」という新たな技術が導入される。これは、サービス利用者がサービスにアクセスするために使用している機器やアクセス手段などのプロファイル、サービス利用者自身の通常のサービス利用パターンなどから、認証トランザクションごとの「リスクの高さ」を判定して契約企業に提供するというもの。危険度が高いと判定された場合には、電話によるコールバックなどの追加認証を課したり、危険と判定された場合にはサービス提供を停止したりといった形で、サービス利用者の保護を行えるという。
RSAセキュリティが提供するこれらのサービスの一要素として、同社では「eFraud Network」と呼ばれる、同社サービスを利用している企業間で共有できる「ブラックリスト」的なデータベースを開発している。過去の取引において危険と判断されたIPアドレスやハードウェアプロファイルなどを共有し、サービス利用者の保護に役立てているという。
RSAセキュリティ日本法人の代表取締役社長である山野修氏は、日本におけるこれらのサービスの提供時期について触れた。FraudActionについては2006年7月のサービス開始を予定しているという。また、Consumer Adaptive Authenticationについては、現在同社が提供しているワンタイムパスワードベースの「オンライン会社向け認証強化プログラム」を推進すると共に、リスクベース認証などの新たな技術を導入した「オンライン・サービス向け適応認証プログラム」を順次展開していく予定であるとした。