「アプリケーションの仮想化ではかなり深いレベルまで到達している」とCitrixの幹部 - (page 2)

山下竜大(編集部)

2006-05-29 21:47

--Citrixが次に目指している仮想化の世界はどのような世界なのでしょう。

 アプリケーションの仮想化テクノロジにおいて、Citrixはかなり深いレベルまで到達していると思います。すでに中堅規模から大規模のエンタープライズ環境はもちろん、病院や学校、官公庁など、さまざまな顧客に導入された実績があります。

 それではCitrixが次にどこに向かっているかと言えば、ユーザーの体験(Usre Experience)をさらに向上させるということです。たとえば、より一層の使いやすさの向上とか、管理性の向上などです。

 また、ユーザーのアクセスシナリオを理解して、いつでも、どこでもアクセス可能な環境を実現することを目指しています。

 さらに、特定の分野に特化したソリューションの提供を推進しています。たとえば、日本ではまだ提供していませんが、より小さな企業向けのソリューションとして、「Citrix Access Essentials」という製品も提供しています。

--日本では、携帯電話用のICAクライアントを発表しています。このような分野も今後重要な市場になるのでしょうか。

 クライアント端末として携帯電話を利用することについては、非常に大きな可能性を秘めていると思います。我々は、すでに日本市場において、NTTドコモやウィルコムと協力することで、各社の端末に対応したICAクライアントを発表しています。

 しかし、携帯電話のディスプレイという小さなスペースで、優れたユーザー経験を提供することは現状では困難です。ですから、本当に携帯電話がクライアント端末として普及するのは、特定のアプリケーションが携帯電話専用に開発されて登場してからになるでしょう。

--Citrix Presentation Serverのバージョン4へアップグレードが好調だそうですが、ユーザーはバージョン4のどんな点を評価しているのでしょう。

 米国で2005年夏に出荷を開始したCitrix Presentation Server 4.2には、いくつかの特長があります。中でも評価が高いのは、印刷機能の強化です。印刷機能では、印刷速度を最大で4倍に向上しています。

 また、これまでのデスクトップPC環境では、すぐ隣にプリンタがあるので、印刷機能についてそれほど難しいものではありませんでした。しかしリモート環境では、たとえば会社で使っているアプリケーションから自宅のプリンタに出力したいなど、複雑な仕組みを実現しなければなりません。そこで、移動したユーザーに最も近いプリンターを選択し、プリントアウトできるようになる機能を搭載することで、利便性を向上しています。

 さらに、帯域幅やCPUの最適化機能も搭載されたことから、パフォーマンスも向上しています。しかし、最大の特長はスケーラビリティを向上させたことです。これにより、サーバごとに対応できるユーザー数が大幅に向上しています。

 Citrix Presentation Serverでは、すべての処理がサーバ上で行われているので、1台のサーバあたり25%のユーザー数を向上できるようになったということは、サーバの25%を別の処理に振り分けることができるということです。これにより、サーバの導入や運用、管理などのコストを削減することが可能になり、TCO(総保有コスト)を大きく削減することが可能になるのです。

 そのほか、アプリケーション分離環境を搭載しています。これにより、マルチユーザーに対応していないアプリケーションでも使用できるようになっています。これにより柔軟性も向上しています。

--コードネーム「Constellation」と呼ばれているLonghorn Serverに対応した次世代の仮想化プロジェクトについて聞かせてください。

 Constellationは、次世代の仮想化技術を実現していくための基盤となるコンセプトです。アプリケーションの仮想化やパフォーマンスを向上し、ユーザーの体験をさらに加速させることを目指しています。

 たとえば、自律型の負荷管理やシステム状態やユーザーの体験のモニタリング、ポリシーベースのセッション記録、ホットアップデートとダイナミックなスケーリング、大幅なグラフィックの高速化などを実現するための技術が開発されています。

 Constellationは、あくまでも将来に向けたコンセプトなので、その機能がどのように製品に組み込まれるのか、あるいはどのように実現されるのかは現時点では明確にはしていません。

--仮想化とは違いますが、ストリーミング技術のプロジェクト「Tarpon」の現状について聞かせてください。

 Tarponは、同じAccess Management Groupで開発されてはいるものの、アプリケーションのストリーミング技術なので、仮想化技術とは性格の異なるものです。Tarponでは、プロファイル、公開、実行という簡単な手続きによりアプリケーションをクライアントにインストールすることなく、クライアント上で使用することを可能にします。

 仮想化技術では、実際のアプリケーションはサーバ上で稼働し、処理結果を画面イメージとして返しますので、クライアントに依存しません。一方、Tarponは、アプリケーションをストリーミングとしてクライアント上で稼働させるので、クライアント側にもある程度の動作環境が必要になります。

 現在、Tarponは、アルファリリースの状態で、限定されたユーザーにおいてテストが行われています。2006年夏にはベータリリースが提供され、第4四半期には正式リリースを計画しています。

--Tarponは具体的には、どのような利用方法が想定されているのでしょう。

 Tarponは、ストリーミングタイプのアプリケーションの仮想化なので、いくつかの利用ケースが考えられます。

 たとえば、サーバの負荷があまりに高い場合に、アプリケーションをクライアント側にストリーミングしてクライアント側で処理することが考えられます。また、常にオンライン状態にできないような場合に、オンライン状態のうちにアプリケーションをストリーミングしておき、オフライン状態でアプリケーションを使用することも可能です。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

マイナンバーカードの利用状況を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]