情報システム部が抱える3つの悩み
その後、ディスカッションは、企業がSOAに何を求め、何に困っていて、どんな期待があるのかについて議論された。
それについて鈴木氏は、SOAが“気付きのプロセス”で導入が進むケースが多いと話す。「これまでは、システムを“ビルド”するか“バイ”するかの選択だけだったのが、SOAによって“ユース”するという選択も可能になった。ビジネスの問題が解決できる気付きの過程が見つけられた」との期待感を示す。

一方、「IT部門だけでSOAを実施することは難しい」というのは清水氏。「エンドユーザーと接点がある業務の改善、例えばカスタマサービスの改善や見積もりのレスポンス向上など、エンドユーザーにとってメリットのある部分にSOAを活用した方が、コスト削減や開発期間の短縮などジミな使い方よりは説得力が大きいだろう」とアドバイスする。
また内野氏は、MIJSメンバーの立場として、「さまざまに連携しながら製品を提供しなければならない中で、各社が共有するサポートセンターを用意し、運用までカバーしなければ、簡単にSOAは普及しないだろう」と述べた。
続いて、三澤氏は、情報システム部の抱える3つの悩み、「コスト削減、スピード経営、セキュリティとコンプライアンス、これら相矛盾するテーマにSOAはどのように結びつくのか」についての解を示す。

たとえば、ERPを導入すると、パッケージの組み合わせやスクラッチなどサブシステムが発生し、膨大な工数とコストがかかる。そこに、SOAを使って連携させる導入が効果的だという。また、スピード経営では、MNPに対応したキャリア各社を例に挙げ、激変する経済環境に対し、SOAで既に存在するサービスをつなぎ合わせなければ、対応不可能な事態も多くなっていると警告する。
さらに、セキュリティとコンプライアンスについては、内部統制で重要なビジネスフローに、受注から入金までの基本的なビジネスプロセスに、不当な行為が働かないかを可視化するポイントを指摘。「もはや、ひとつのパッケージでは閉じられない。ここにSOAのBPELを使って可視化し、内部統制ロジックを作り込むことが有効となる」(三澤氏)
IT部門が業務側の了解を取りながら作ってみる
最後に、日本でのSOA普及において必要なこととは何かについて語られた。鈴木氏は、日本にはもっとアーキテクトが必要だと強調する。「日本企業は過去20年間、オブジェクト指向開発を進めてきたが、今後はSOAを真正面から捉えるために、人材教育が重要になる」(鈴木氏)
また古手川氏は、「ひとつ目は、サービス的につなぐ要素を段階的に計画すること。2つ目は、最初にBPMツールを入れ、全体を俯瞰した後にSOAを導入することが効果的」と話す。
「いきなり機能をサービス化して再利用しようとするのは無理」と話すのは三澤氏。「やはり、直近の課題に対してSOAを使って解決してみようというアプローチが望ましい。そうするとROIも明確になる」と述べる。
そして、清水氏は、「従来のシステム構築のウォーターフォールパターンではなく、IT部門が業務側のステークホルダーの了解を頻繁に取りながら、まずひとつ目のサービスを作ってみる。テクノロジーとは関係ないような、細かなスパイラルでまわしていくことが、SOA開発における成功の要件になるだろう」と語った。
