自前でシステムを構築するのではなく、外部から提供されるアプリケーション能力を“サービス”として購入・利用するSaaS(Software as a Service)が注目を集めている。SaaSが注目されるのは、ASP(Application Service Provider)型サービスと違って、必要なサービスだけを利用でき、しかも購入するサービスをもとにユーザー企業にあわせてカスタマイズできるという点にある。
大手ベンダーはもちろん、中小のベンダーも、この新しいビジネスモデルへの参入、あるいは参入することを表明している。日本SGIも、この6月にSaaS事業を展開することを発表している。同社のSaaS事業がユニークなのは、SaaS事業の基盤となっているのがLinuxを中心にしたオープンソースソフトウェア(OSS)群で構成されているという点にある。
OSSを基盤にしたSaaS
同社のSaaS事業のサービスメニューは、SSL-VPN、データのオンラインバックアップ、情報資産のアーカイビング、ストリーミングなどが予定されており、より具体的なメニューの詳細は、近々発表される予定だが、その基盤がLinux/OSSであることは、前面に出ていない。事実、プレスリリースにもそのことは記載されていない。このことについて、同社のアドバンスドテクノロジーコミッティでチーフLinuxコンサルタントを務める高澤真治氏は、こう語る。
「OSSは元々“縁の下の力持ち”という存在です。前面に出てくる必要はない。この数年でOSとミドルウェアの技術発展が急速に進むことで、その力が強いことが分かってきた」
ほかの大手ベンダーであれば、OSSを利用していることを前面に出して、注目を集めようとするだろう。しかし、日本SGIでは、OSSという、現在注目を集められるはずのキーワードを使わずに、SaaS事業を展開しようとしている。これは、同社のSaaS事業がそうしたものを必要としないという姿勢の表れである。それは、同社がこの数年間、Linux/OSSに密接に関わってきた経験に自信があることをも示していると言える。
差別化できるアプリケーションに踏み込む
高澤氏は、1999年に日本SGIに入社してから、Linux/OSSに関わってきている。そうした同氏にとって「日本SGIにとってSaaSは、最近になって出てきたものではない。Linux/OSSでのOSとミドルウェアの技術が進んできたことに加えて、さまざまなソリューションが出てくるようになった。その間にも、企業がシステムを構築するのは大変ということも分かってきた。そして日本SGIがOSSのコミュニティーとのつきあいで蓄えられてきたものがあり、それをSaaS事業で生かそうとしている」のである。
また同氏は、ビジネスとしてLinux/OSSに取り組むことの意味をこう語る。