iPhoneより多くの機能を日本の携帯電話は実装している。同様に、iPod touchに関しても、同等もしくはそれ以上の機能をもったMP3プレイヤーは少なくない。iPod touchと同じ時期に発売されたiPod Classicにしても、写真と動画が見れるようになった部分を除けば2001年に発表された初代モデルと大きく変わりはない。
iPhone/ iPod touchは今年発売されたばかりなので、購入しているユーザーの多くはアーリーアダプターに属する人たちだろう。また、安定性という意味ではバージョン1の製品ということもあり、これから幾つかの改善が必要になってくる。それでもMacユーザーだけでなくWindows ユーザーにも支持されているのは、単に機能が多いからだけではなく、製品を利用することによって得られる体験を好んで(もしくは期待して)利用しているのではないだろうか。こうした、機能より体験を重視した製品が支持される傾向はiPodだけでなく、他分野の製品でもみられる。機能の数より体験を重視するのはWebサイトを構築する上でも重要な考え方だ。
目的に応じたインタフェースの提案
iPhoneが完成するまでの話がTIME.com の「Apple's New Calling: The iPhone」に掲載されている。この記事では、インタラクションデザインやインタフェースデザインについて興味深い記述がなされている。
iPhone/iPod touchを利用したことがある方は分かるだろうが、音楽を聴く時、ビデオを見る時、Webブラウジングをする時、両製品はそれぞれ異なるユーザーインタフェースをもっている(画像2)。ソフトウェアやハードウェアのインタフェースの多くは、コマンドや機能をグループ分けしてメニューを構成しているものが多い。これは開発者の視点からみれば当然の考え方であるが、一般ユーザーはコマンドや機能を念頭においてデバイスを利用していない。かわりに一般ユーザーは「音楽が聞きたい」「メールがみたい」といった、結果や目的に対して何をしたら良いのかと考える傾向があるだろう。つまり、機能やコマンドではなく、目的に応じたインタフェースが必要というわけだ。ユーザーが必要なときに、最適なインタフェースを提供するという対話式のデザイン。モバイル機器では限られたスペースを最大限に利用して、様々なインタラクションを行うわけだが、そのインタラクションをハードウェアではなくソフトウェアを駆使することによって、あたかもデバイスと対話をしているかのようなインタフェースを作り上げたわけだ。Appleというソフトウェアを開発する企業らしい発想ともいえる。
こうしたiPhone/ iPod touchが提案するデザインの考え方は、その中に表示され、ユーザーがアクセスするWebサイトにも同様のことがいえる。400ピクセルにも満たない小さなスクリーン上で様々な機能をもったサイトを提供するのは難しいし、多くのユーザーはそれを求めていないだろう。今までの携帯向けサイトと同様、限られた時間で手軽に利用できるサイトは必要とされている。しかし、ユーザーが何をしたいのかを考え、それに合わせて最適なインタフェースを提供することがより一層必要とされているのだ。つまり、いかにも携帯向けのサイト、もしくはPC向けのサイトデザインを提供するのでは、iPhone/ iPod touchを利用する多くのユーザーへ満足を提供することは難しい。