急速にポートフォリオを拡充する「データ管理のエキスパート」としてのオラクル--加速するBI(4) - (page 2)

柴田克己(編集部)

2007-11-20 09:19

「データを扱うためのノウハウ」が最大の強みに

 オラクルでは、BIというカテゴリについて、「フロントエンドのツールはごく一部。埋もれているデータを洗い出し、管理し、可視化のための指標を定義し、最適なルック&フィールを定義して出力するまでのプロセスのすべて」であると定義しているという。

 フロントエンドだけでなく、バックエンドのデータ管理にフォーカスが移っているというのは、オラクルに限らず、現在BI分野に力を入れる多くのベンダーに共通するところだ。

 そうした現状において、バックエンドの「Oracle Database」を中心に、周辺のETLツール、データマート作成までのデータマネジメントの環境を、一気通貫で提供できる点で、オラクルの優位性は高い。そして、データベースを出自とする同社のこれまでのビジネスの中で培われてきた「データの扱い」に関するノウハウの蓄積も、その優位性を後押しするものとなる。

 「オラクルの起源はデータベース。データの扱いに関するソリューションの多さは、他社の追従を許さない。たとえば、ETLツールとしては“Oracle Data Integrator”があり、Oracle以外のデータソースに対しても、十分に対応できる環境がある。さらに、SOAを利用したデータの統合のほか、バッチ処理、スナップショット、DBリンク、といった従来型のアプローチながら強力な技術も持つ。分散しているデータをまとめ上げて、ひとつにまとめ上げるという点ひとつをとっても、さまざまな切り口でソリューションを提供できる。また、コンサルタントも、その分野のエキスパートだ」(岩本氏)

 データマネジメントのノウハウに加えて、BIに関するすべてのソリューションを、Oracleのプラットフォーム上でそろえられる、いわゆる「スイート」のアプローチには、スイートならではのメリットもある。

 そのひとつが「セキュリティ」だ。BIのシステムでは、OLTPよりもよりフロントに近い部分にデータマートを作成する。いわば、情報の出口となる部分に近い場所にデータが置かれるわけで、それをいかに守っていくかは重要な課題となる。Fusion Middlewareに属するオラクルのBI Suiteでは、Oracle Databaseの持つセキュリティ機能を、そのまま生かせる点がメリットになる。

 また、複数のツールが企業内に複数存在する環境では、それぞれのツールが持つクセによって、同じデータを使って分析を行っても、異なる結果が導き出されるといったケースもあるという。特に内部統制に関連して、企業全体で、同一の指標を共有したいというニーズを鑑みれば、今後は、企業内でのツールの標準化も求められるはずだ。

 もちろん、システム構築に必要なあらゆるコンポーネントについて、ひとつのベンダーからまとめて提供を受けることにより、イニシャルコスト、管理運用コストが低減できるといった利点もある。

 岩本氏は、最新のOracle BIの特徴として、Siebelのツールが取り込まれることにより、ツール側のユーザビリティも向上したとアピールする。これは、元々のSiebel Business Analyticsがコールセンターでの利用を意識したツールであった点とも関係が深い。

 Flashを利用したリッチなフロントエンドに加え、「Oracle BI Publisher」と呼ばれるレポーティングツールもユニークだ。これは、データ部分をXMLで扱い、表現を定義する部分と出力には、WordやPDFといった使い慣れたツールを利用できるというもの。現場の担当者レベルであっても、専用ツールを使うことなく、見栄えのいいレポートを容易に作成できるようになったという。

統合はさらに進む

 現時点で、買収したばかりの「Hyperion」は、まだ他の製品ほど、いわゆる「Fusion Middleware」への統合は進んでいない。しかし、今後は、Oracle BI Suite EE、BI SE Oneなどと同様、細かいコンポーネントレベルまでの統合が進んでいくと予想される。

 こうした各製品のFusion Middleware上での統合に合わせて、OracleはBIの分野にどのように取り組んでいくのだろうか。

 岩本氏によれば、現在BIが特に強みを増しているのは、金融、製造の2業界で、今後もその傾向は続くだろうという。また、通信分野などでもニーズが高まっており、今後、BIと呼ばれるカテゴリがカバーする分野は相当に広くなると予想している。

 「今後のBIの応用範囲には、ネットのXMLデータと社内のデータを組み合わせて行う先進事例としての“マッシュアップ”。逆に、きっちりとさまざまなサブシステムを横断できるようにプロジェクトを組んで進めていく“経営管理”の分野。さらに、よりリアルタイム性を高めた“現場でのBI”といったものが新たに出てくると考えられる。オラクルでは、これらのいずれに対しても打って出られるよう、柔軟なアプローチをとっていく。BI、EPMに対して各社が発しているメッセージは、表面的には同じに見えるかもしれないが、アーキテクチャは全く違うということを、顧客目線で判断していただけるように、我々も努力し、訴えて行かなければならないと考えている」(岩本氏)

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