「パッケージ」か「オンデマンド」かは要求次第
Applitusでは、この記事の冒頭で紹介したアプリケーションの中から、ユーザーが使いたいものを選択し、そのまま、もしくはカスタマイズして利用できる。
価格設定は、いわゆる「ASPサービス」としては、若干異色だ。プラットフォームとしてApplitusを利用するための基本料金に、利用したいアプリケーションのユーザー数分の初期費用および月次料金、加えて、アプリケーション間の機能連携を行う場合は、カスタマイズ料金が加算される。カスタマイズ料金は、かかる工数を月割りにして、約2〜3年で償却できるスキームを用意しているという。
これは、「カスタマイズ利用が多い」というApplitusユーザーの特性を反映した独特の価格付けである。その点では、ネオジャパン自身もApplitusをあえて「オンデマンド・アプリケーション・サービス」と銘打つことで、一般的な「ASP・SaaS」と呼ばれるサービスとの差別化を図っているようだ。
Applitusは、現在、desknet'sを中心として年間で約150社の利用があり、ユーザー数としては100〜500ユーザー規模の層が最も厚いという。主な新規ユーザーは、“ASP”をキーワードにした検索連動型広告からの流入に加えて、ホスティング事業者からの紹介も多い。desknet'sを使っているうちに、独自のカスタマイズを行いたくなったユーザーが、Applitusへの移行を検討するケースである。
自社でシステムを保有したいユーザーには、パッケージベースのシステム売り。カスタム抜きで、小規模に利用したいユーザーはホスティング事業者やISP事業者が提供するASPサービス。そして、他システムとの連携を含むカスタマイズを行いつつ、運用管理も外部に任せたいというユーザーにはApplitus。ネオジャパンにとって、Applitusは、ユーザーの求める機能を、最も利用しやすい形で提供するための選択肢のひとつという位置づけである。また、ネオジャパンの持つ、ウェブアプリケーションを社内で有効に機能させるためのコンサルティングノウハウをユーザーに提供できる点も、他のASPサービスにはない、Applitusのアドバンテージのひとつであるという。
「まだまだパッケージへの要求は高い」
「日本ではまだまだ“パッケージ”に対するニーズが高い。今後、さらにASP・SaaS形式のサービスが普及していくためには、“ユーザーの意識の変化”と“事業者の信頼度の向上”がカギになるだろう」と小沼氏は言う。
数年前と比べてかなり変化してきたとはいえ、企業ユーザーの間には「業務のために利用しているデータを社外に置く」ことに対する抵抗が根強く残っている。近年、たびたび報道されるようになった情報漏えい事件なども、そうしたユーザーの抵抗感を強めるひとつの原因となっている点は否めない。
ASP・SaaS事業者は、そうしたユーザーの懸念を払拭するための努力を続けるとともに、事例紹介などのプロモーション、ネットを介したサービスの利便性や有用性のアピールを積極的に行っていくべきだと小沼氏は語る。
とりわけ、昨今の“SaaSブーム”においては、SaaSの技術やビジネスモデルの先進性が大きく取りざたされる。しかしながら、実際に対価を払って、そのサービスを利用するのは、当然のことながらユーザーである。ASP・SaaSにかかわる事業者が信頼に足るサービスを提供し続けることで、ユーザーがその便利さを実感し、対価を支払うことを当然と感じるようになって、はじめて、真の意味での「ASP・SaaSの時代」はやってくるのだろう。