企業情報という“大河”を治水する--なぜ「連結経営システム」は必要なのか?

森川徹治(ディーバ) 2009年07月22日 08時00分

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 「連結経営」の普及は始まったばかりである。よって、それを支える「連結経営システム」の意義や定義が広く認知されるのもこれからである。今回は、企業の情報フローにおける“最下流”でかつ、経営の意志決定に極めて近いところから発展してきた連結経営のための情報システムについて考えてみたい。

スプレッドシートの落とし子

 まずは連結決算に目を向けてみよう。

 「コンソリ」という言葉をご存知だろうか。Consolidation、つまり連結のことである。連結経営という言葉がある程度の認知を受けるまで、連結といえば、連結決算だった。その連結決算システムを「コンソリシステム」と呼んでいた。

 コンソリシステムは、世界的に見ても、メインフレームをベースとしたバッチオンラインシステムではなく、「Microsoft Excel」や「Lotus 1-2-3」のようなスプレッドシートから発展したものが多い。大量のトランザクションデータを集め、集計処理を行う会計システムと異なり、集計済みの各社の財務諸表を収集、調整、再構成して作成する連結財務諸表は、知識と経験に裏打ちされた“カン”をもつプロフェッショナルによって、おおよその体裁を整える方法(「エンピツをナメながら」という表現が使われていた)で作成されていたからである。

 インターネットとWindowsの爆発的普及でパーソナルコンピュータ(PC)が大衆化し、機能や性能が向上するにつれ、スプレッドシートは、個人が比較的簡単に使いこなすことのできるシステム開発環境としても発展した。マクロ言語など、簡易的なシステム開発環境は、スプレッドシートの活用範囲を拡大し、システムからの情報提供における主導権を活用ニーズの現場であるエンドユーザー側にもたらした。いわゆる「エンドユーザーコンピューティング」(End User Computing:EUC)である。

 エンドユーザーコンピューティングは、高度な専門性を持つ会計や財務などのプロフェッショナルが牽引した。そのツールを使いこなすだけの業務目的や知識、知見を十分に備えた人々である。それなりの業務専門知識を持つプロフェッショナルが直接情報を加工するという点では、ビジネスインテリジェンス(BI)に近い。ビジネスインテリジェンスは、高度な業務知識や目的があって初めて機能する。

 コンソリシステムという初期の連結決算システムは、スプレッドシートの普及によるエンドユーザーコンピューティングの“落とし子”である。経理や財務のプロフェッショナルによる手作業が、スプレッドシートによって迅速に計算することができるようになった。そこで培われたノウハウを、スプレッドシートが次第に吸収し、コンソリシステムへと発展していった。このスプレッドシート的なエンドユーザーコンピューティングツールという特徴が、連結経営システムの一つ目の顔となる。

普及しなかった経営情報システム

 次に、経営情報システムの側面に目を向けよう。経営を支援する「Strategic Information System(SIS)」や「Management Information System(MIS)」と称された経営情報システムブームはこれまでに幾度もあった。しかし、現実には普及までには至っていない。情報を使う側が“主導的”で“明確な目的”を持って、この経営を支援するためのツールを導入してこなかったことが主要な原因である。

 サプライチェーンや生産管理、会計システムなどの業務システムは、ある程度目的が絞られた業務プロセスのシステムである。BPR(Business Process Re-engineering)と呼ぶ現状業務の変革を伴うとしても、本来の目的について悩むものではない。

 しかし、経営の意志決定を支援するという一見明確なようで、具体的化しようとすると、かなり漠然としたテーマを相手にする経営情報システムの目的の設定は、想像以上に困難である。経営の守備範囲は極めて広く、かつ経営者によってその軸足も異なり、さまざまな情報を必要とすることからである。

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