企業情報という“大河”を治水する--なぜ「連結経営システム」は必要なのか? - (page 2)

森川徹治(ディーバ)

2009-07-22 08:00

 一方、連結経営システムは、連結経営を推進するためのものである。よって、従来の経営情報システムに比べると、格段に目的が明確な情報システムといえる。

連結経営に欠かせない連結セグメント情報

 日本にも、単体経営から連結経営への転換をすでに果たした企業がいくつもある。共通しているのは、まず経営者に明確な意志があったことだ。次は、意志を伝達するため「連結経営情報」を整備したこと。そして、それらの情報に基づいて組織へ変革を定着していったことである。

 連結経営を実践している企業の話によると、適切な連結経営情報の整備は、連結経営を定着するためのツールとして欠かせないという。しかも、一度意志決定がなされると、一刻も早く連結経営を実践することが最大の経営課題となる。

 ここで言う連結経営情報とは、グループ経営の意志決定単位となる事業セグメントごとに作成した連結財務諸表のみならず、経営判断に必要なさまざまな非財務情報を含めたものである。連結経営とは、独立した会社の集団を経営することである。全体最適という視点で、グループ全体の事業資産を最も効果的に経営するための判断情報が必要になる。

 グループ経営における意志決定単位を、ここでは「経営セグメント」と呼ぶことにする。

スプレッドシートでは捌ききれない連結経営情報

 経営セグメントと実際の会社が一致するのは難しい。多くの場合、親会社自身がグループ最大の事業会社であり、自社を経営セグメントに分解し、関連するグループ会社と併せて全体最適を考える必要がある。

 情報の作成に面倒があるように、意志決定も親会社単体の経営状況に大きく影響を受ける。近年、純粋持ち株会社制に移行する企業が増えているのは、全体最適の経営判断を行いやすくするためである。

 しかし、持ち株会社制へ移行しても、グループ会社の中には、複数の事業を行っている場合もあり、単純に各グループ会社を経営セグメントとすることは難しい。また、グループ企業の数が多くなると、複数のグループ企業を集約して一つの事業として把握することも必要になってくる。こういった場合は、連結決算処理を多段階で行うこともあり、システムは一層複雑になる。

 対象とする情報の範囲や、経営セグメントの流動性の課題もある。連結経営のためには、グループ会社を経営セグメント単位で連結決算するのみならず、数量などの非財務情報やさまざまな定性情報も必要である。さらに、経営セグメントは、事業環境の変化や経営者の交代によって大きく変わることもまれではないために、高度の柔軟性も必要になる。

 こうなってくると、情報収集や作成の迅速性、信頼性、複雑性が格段に高まり、システムにかかわる人もかなりの数となり、スプレッドシートの延長線上では捌ききれない。各社とつながり、さまざまな経営セグメント情報を迅速に作成し、経営判断に活かし、かつ連結経営の実践に役立つことのできる柔軟性の高い「経営情報データマート」であることが、連結経営システムの二つ目の顔となる。

外部牽制機能を積極的に活かすツール

 一方、経営という業務プロセスについても考慮が欠かせない。企業の経営情報システムの第一の役割は、アドホックに直感的な経営判断を支援するものではない。地道でルーティンな経営業務プロセスを円滑にすることにある。

 経営業務プロセスは、未来を展望しつつも、しっかりと現実を直視し、自らを環境適応させていくものだ。経営情報システムとは、この経営PDCAサイクルという企業の“生活習慣”をしっかり身につけるためにある。

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