日本で「人材管理システム」の活用が進まないワケ - (page 2)

梅田正隆(ロビンソン)

2009-11-12 19:09

「SaaS」と「人事」は相性バツグン?

 一方で、人事システムの中でもユーザーが直接触れる「フロントエンド」の部分は激戦区であるようだ。

 同氏は「フロントをパッケージでやる方が少数派ではないか。むしろグループウェアやワークフローツールなどで覆っている企業が少なくない」と話す。グループウェアのノウハウを多く持っている会社は、例えばIBM Lotus Notes/Dominoや、Microsoft Exchangeをフロントに利用するケースが多い。

 「グループウェアではデータ更新系が弱いと判断したら、ワークフローの仕組みを使うだろう。パッケージの場合、ライセンスの問題もある。全グループに適用することを考えた場合、人事パッケージは価格的に敷居が高い製品が多い」と解説する。

 フロントエンドをグループウェアやワークフローで覆ったインターフェースとする企業が多いのは、エンタープライズ向け人事パッケージが「高価」だからというのが理由のようだ。人事システムと会計システムが同一の製品であれば多少は良いものの、それでもパッケージだけでは足りない機能が出てくる。それをグループウェアなどで補うわけだ。

 自社内のシステムでカバーできない機能について「SaaSのような社外のシステムも活用し、社内と社外を意識しないで利用できる仕組みのニーズが高まってくる可能性がある」と浅利氏は指摘する。

 例えば、SMB向け製品である「WorkDay」は、後にOracleに買収されたPeopleSoftの創業者らが開発したアプリケーションであり、完全なSaaS型の人事サービスとして脚光を浴びている。人事系の機能としては従業員管理の「WorkDay HCM」と、給与システムの「WorkDay Payroll」とがある。給与機能が切り離されたのには、あえてこの機能を統合することでの差別化が難しいという判断があったようだ。

WorkDay HCM SaaSとして提供されている「WorkDay HCM」は、勤怠管理、福利厚生管理、報酬管理、人材開発、業績管理、人材配置の6つの仕組みを備える。給与計算の仕組みは切り離され、WorkDay Payrollとして提供されている。(画像クリックで拡大表示)

 同氏はまた「人事業務の仕組みはネットワークに載せやすい。給与計算は処理が重いが、処理のピークを予測できるため、あらかじめ分散しておくことができる。そのためSaaSなど外部のシステムを利用するのに適している」と話す。

 ここで気になるのは、従業員のデータをどこに置くかという点だ。一般に、人事システムで扱うデータは、会計や生産のデータよりも、外部に置くための技術的な敷居が低い。会計の仕組みや生産の仕組みは、トランザクションの処理が重く、周辺の多数のシステムと密につながっているからだ。前回の記事でも指摘したように、人事の仕組みは比較的外部に置きやすいのだ。

 浅利氏は、正社員だけではなく非典型雇用も従業員に含まれるのが一般的になってきたことを考慮に入れると、「社内システムと外部のシステム、外部のリクルーター、外部のラーニングシステムなどを、うまくつなぎ合わせて使うという動きが、会計システムよりも早く出てくるだろう」と話す。実際、米国においては中堅以下の企業がSaaS型の仕組みを積極的に採用し始めているそうだ。

活用進まぬ人材管理--原因は?

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