IFRSでは、企業グループ本社が連結財務諸表を当局に提出する一方で、各国の拠点では、税法や(日本で言う)会社法といった現地当局が必要とする書類を提出する必要がある。各拠点の国の会計基準(GAAP)での会計報告が必要だ。 つまり「“二重帳簿”を前提とするIFRSは“公用語”であって“母国語”になりえない」(森川氏)のである。トライアル版は、こうした対応のために各国拠点でのGAAP調整と親会社でのGAAP調整といった機能も盛り込まれる予定だ。
続くアドプション版では、現在のDivaSystemでのJ-GAAPと同等以上の水準での精度や効率でIFRSベースの連結決算を実施できるものになるという。トライアル版での対応項目に加えて、資本連結や税効果、未実現といった各種連結処理でIFRSに則った処理が可能になる予定だ。加えて、過年度遡及を支援する機能も搭載されるという。
連結会計でのIFRS対応では、人材への教育研修が重要として実務講座を充実させていくとしている。入門講座では、IFRSとJ-GAAPとの大きな違いやIFRSの財務諸表体系などのIFRSの概要を説明。入門講座より実務的な対応講座では、資本連結に関する部分を説明していくという。
これまでとは異なるIFRSへの“アドプション”
ユーザー企業のIFRS対応支援という点では、会計や税務などの実務担当者向けに法令検索サービス「eRules」を提供する。eRulesは、ディーバが先日買収して完全子会社になるインターネットディスクロージャーが主体となって提供している。
eRulesは、会計や監査、税務に関して約900以上の法規や通達、委員会報告などを収録したもので、それらの高速検査が可能だ。現在eRulesにDivaSystemのマニュアルや手順書を収録して、法令とともに検索可能になる予定。加えて、IFRSの全文を収録すべく交渉をしているという。
IFRS対応は、さまざまな点でJ-GAAPと異なるが、その中でも大きいのが「原則主義」だ。原則主義は、共通の基本方針は定めるが、細則は企業が自ら判断して決定していいというものだ(J-GAAPは、細則が細かく決められた「細則主義」)。たとえば、固定資産償却で、企業が自ら個々の資産の対応年数を決めることができる(J-GAAPは業種や業態、種類ごとに対応年数が決められている)。
つまり原則主義は、経営情報の「開示を戦略的に自分たちで決めることができる」(森川氏)ということだ。その本質は、経営判断に使っている情報を開示しやすくなると言え、企業の経営層が自らの意思次第で経営判断を投資家に示す情報として相当に反映できるということにある。日本企業での会計の問題として、制度的に開示しなくてはいけない「制度会計」(「財務会計」ともいう)と、企業の経営層が自分たちの経営管理に活用する「管理会計」との乖離が指摘されてきたが、IFRSの原則主義で“財管一致”“制管一致”が実現できるようになる。
日本の会計基準は、この数年IFRSへのコンバージェンスとして、さまざまな基準の変更がなされてきているが、早ければ2015年から実行されるIFRSの強制適用、つまりIFRSへの“アドプション(適用)”は、「これまでのコンバージェンスとは全く意味が異なる」(森川氏)。それは原則主義で会計基準の原理そのものが変わってしまうからだ。
ガバナンスを効かせる
ディーバのIFRS対応支援の主要なポイントは以上になるが、課題と考えられるのが本社以外の子会社などのグループ企業の会計システムをどう取り込むかという点だ。そうした課題に対応するのが(2)のグループ統一会計である。