この分野で活きてくるのが、完全子会社となるインターネットディスクロージャーの情報提供サービス「開示Net」だ。「監査法人を中心に3万ユーザーがいる」(森川氏)という開示Netは、電子開示システム「EDINET」(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)や東京証券取引所が運営する「適時開示情報伝達システム(TDnet)」に収録されている開示情報を検索できるというものだ。収録された全文書に対して高速な検索ができるとともに、たとえば粗利益率といった財務指標も自動生成されて収録されている。また、IFRSが適用された英文の年間報告書も収録されている。
この開示Netについて森川氏は、今後IFRS適用で「他社はどのようにIFRSを適用されているのかを知りたがっている」というニーズを満たすことができると説明する。具体的には、会計方針としてどのようなものを打ち出しているのか、注記情報はどのようなものがあるのかといった連結財務諸表の作成時に必要となる課題に対応した情報を提供できる。また、同業他社や市場の把握、自社との比較といった使われ方もあるだろうとしている。
開示/IRの分野では、開示済みデータからIR資料を作成するソリューションを現在開発していると森川氏は説明。これは、TDnetに収録後、自動的にXBRLデータを取り込んで、企業のIRサイトにハイライト情報を即時に反映するものだという。IR情報では、日本語と英語のレポートを同時に自動的に生成することもできるようにするとしている。
連結経営の高度化も推進
ここまで見てくると、ディーバの(1)〜(3)の取り組みが企業のIFRSという制度対応なものになっていることが分かるだろう。だが、同社の取り組みとしては、制度的対応への支援という側面がある一方で、企業グループ全体の成長を促す対策、企業グループ全体での「連結経営」を高度化させる対策も取っている。それが(4)の経営情報活用だ。具体的には、提供が始まっているデータウェアハウス(DWH)/ビジネスインテリジェンス(BI)製品の「DivaSystem MIPS」である。
MIPSは、DivaSystemのモジュールとして提供されるものだが、既存のDWおよびBI製品とはやや異なるアプローチをとっている。DWおよびBIでは、ERPやSCM、CRMなどの基幹系システムにあるトランザクションデータをDWに貯め込み、蓄積されたデータをBIアプリケーションで分析するといったものだが、あくまでも個別企業内部で使われることが基本だ。
これに対してMIPSは、本社の単体会計や連結会計などの各種財務情報はもちろん、子会社や支店、工場などまでを含めた企業グループ全体の販売や生産、在庫などのデータを統合して、その統合されたデータから顧客単位や製品単位などにドリルダウンして分析を行うという。MIPSは、リアルタイムにデータを参照、修正、収集するモジュールの「DivaSystem EIGS」とともに活用することで、その能力をより活かすことができる。MIPSでは、多種多様なユーザーインターフェースの分析ツールを準備することで、経営層や経理担当、経営企画担当、グループ会社など、さまざまなエンドユーザーの経営情報活用を実現できると説明している。
「動き始めているのは1%」
IFRS対応支援と連結会計システムを中心にいくつかの領域でビジネスを展開しているディーバだが、実際のユーザー企業のIFRSへの反応は森川氏にどう見えるのか。森川氏は企業の現在のIFRS対応について「実際に動きを見せているのは1%ぐらい」と話す。
そうしたユーザー企業では現在、「IFRSでの会計方針をどうすべきかを検討している」(森川氏)段階だという。会計の方針を巡る問題としてはたとえば、実務上の問題として「本社が会計処理を一括すべきか、グループ企業にやってもらうのか」(森川氏)という議論も交わされているという。
また、そうした実務上の問題とは別の問題も存在する。たとえば「特別目的会社(SPC)の取り扱い」(森川氏)に関する議論だ。
従来のJ-GAAPを含めた会計基準では、SPCは連結対象から外して、処理することが許されていた。しかし、IFRSではSPCを連結対象とすることが決められている。これまで簿外で大きな損失を出していたSPCが連結対象になると、SPCの取り扱いが極めて重要な問題になってくる可能性があるからだ。