#8【主張】:言葉や態度がけんか腰になっていないか
自分の権利や意見を主張するときには、冷静さを保たなければならない。言葉や態度がけんか腰になっては、相手から望ましい行動を引き出せない。熱意は、空回りすると逆効果になる。それどころか「主張するだけの背景もなく、好き勝手にワガママを言っている人」として蔑みの目で見られかねない。
自らの権利が侵されそうになった場面でこそ、毅然さと柔和さを併せ持って、相手に義務の遂行を促せる余裕が必要だ。そのためには、相手の立場を踏まえ、想像力を働かせ、落としどころを設計しなければならない。そこで注意すべき最大のポイントは、主張に対する見解と、それを裏付ける一連の根拠を明確に区別して用意することだ。
#9【支持】:単なる迎合になっていないか
相手に対する支持を表明するときに、その意見に対して、軽々しく「全面支持」を与えてはならない。常に、支持する部分とそうでない部分を明確にして、その理由を明示する習慣をつけるべきだ。それによって、支持理由の説得力が増し、信頼を集めるだろう。
逆に、支持の理由が、好き嫌いに基づく感情的なものであったり、単なる迎合にしか映らなければ、「何でも自分の感情で決める、大した考えをもっていない人」と見られ、軽佻浮薄(けいちょうふはく)のレッテルを貼られて、周囲の信頼を失ってしまう。
支持は、信念や思考に基づいていなければならない。別の見方をすれば、自分の信念を明示し、考え方を主張できる絶好のチャンスでもあるといえるだろう。
#10【命令】:命令の背景に明確な「大義」があるか
究極的には、命令された相手の心の中に、喜びの感情が芽生えるような「命令」が理想だ。しかし、それは付け焼刃のような人間関係では望めない。日ごろから、地道に築いてきた磐石な信頼が、人間関係の根底になければ成り立たない。
また、その命令の背景には「大義」が必要となる。大義は「組織の成長のため」「組織として成果をあげるため」といった、相手と共有できるものでなければならない。このような大義があれば、信頼は深まり、大義を共有することで、命じられた相手にも喜びの感情が生じるのだ。逆に、大義のない命令は、権威をかさに着たものととらえられ、命令された側は「自分を道具のように使っている」と抵抗や反抗の感情を蓄積していく。
ソニーの創業者の1人である盛田昭夫氏は、創業時から「日本国を世界で復権させる」という壮大な野心を抱き、世界の最先端市場で勝負することを心に誓っていたという。そして、仕事をゲームのように楽しみ、部下をその楽しみに巻き込んだ。彼の大きな目的にまい進するエネルギーと志、そして純情が、世界的企業を生み出す源となった。盛田氏には「大義」があった。そして、この大義こそが周囲を動かしたのだ。