IT戦略はビジネス戦略そのもの
――昨今の経済情勢の激変から、経済の不安定さが常態化する“ニューノーマル(New Normal)”の時代が来たとも言われていますが、そうした中で世界のCIOはどのような点に注目しているのでしょうか。
Ruggero ニューノーマルの時代を迎えた中で、CIOたちが注目しているポイントは3つ挙げることができます。「経済性」「リスクマネジメント」「ビジネスイネーブルメント」の3つです。
まず1つめの経済性は、言い換えればITのコスト構造をどう変えていけばよいかということです。この点では、CIOはこれまでにも増してCFO(最高財務責任者)との緊密な連携が求められています。
たとえば、ここにきて多くの企業が利用し始めているクラウドサービスは、ITコストを固定費から変動費に転換できるとあって、CFOも企業コスト削減の観点から非常に注目しています。CIOもCFOと同じ観点で、ITだけでなく企業全体のコスト構造を変革するという姿勢が求められていると思います。
2つめのリスクマネジメントは、システムに何らかの不具合が生じた時のビジネスリスクについて、これまでにも増して厳格なチェックが求められているということです。
このリスクマネジメントは1つめの経済性とも深く関連しており、同様にCFOとの緊密な連携が不可欠となってきています。先ほど例に挙げたクラウドサービスで言うと、CFOは大きな期待を寄せるものの、CIOはクラウドへの移行に伴う、さまざまなビジネスリスクをしっかりと把握しておかなければなりません。そしてそのリスクについてCFOと認識を共有しておく必要があります。
さらにリスクマネジメントの観点から、最近の傾向として、「ポートフォリオマネジメント」に注目するCIOが増えてきています。どういうことかというと、すべてのアプリケーションのポートフォリオを注視して、ビジネスリスクが高いものはないか、重複しているものはないか、といったチェックを厳格に行い、一段と効率性を求めるようになってきているわけです。
――3つめのビジネスイネーブルメントとは、どういうことでしょうか。
Ruggero ビジネスイネーブルメントとは、ビジネスをより成長させていくという意味合いですが、これについてCIOたちは2つの点に注目しています。「IT戦略」と「ビジネスインテリジェンス(BI)」です。
1つめのIT戦略は、ITそのものの戦略の話ではありません。端的に言えば、ビジネスを成長させていくためにITで何ができるかを戦略的に考えるということです。そして2つめのBIについては、文字通りインテリジェントなビジネスを展開するためには、効果的なツールを活用すべきだという認識が高まっているといえます。
――世界のCIOは今、経済性、リスクマネジメント、ビジネスイネーブルメントの3つに注目しているとのことですが、そうした視点は日本のCIOも同じなのでしょうか。

小西 それら3つのキーワードが重要だということは日本でも認識されていると思いますが、基本的な考え方のところで、世界と日本ではまだ認識の違いがあると見ています。
たとえば、ビジネスイネーブルメントにおけるポイントでIT戦略という言葉が出ましたが、日本でIT戦略というと技術的な観点で語られることが多いのではないでしょうか。でも世界のCIOが注目しているのは、先ほど話した通り、ビジネスを成長させていくためにITで何ができるかを戦略的に考えるということです。要は、IT戦略はビジネス戦略そのものだと。日本ではまだまだ、その基本認識を啓蒙する必要があると感じています。