Stephan氏は既存のアプリケーションのモバイル化にあたって、端末固有のユーザーインターフェースになじんだものを提供すること、機能をモバイル用途向けにある程度制限すること(たとえば、正式なコメントではなくマイクロコメント機能など)、電話やSMSなどの端末側の機能を利用できることなどが、SAPソリューションの特徴とした。
「単にビジネスプロセスとデータがモバイル上で動いているに過ぎないのであればメリットは限定的だ」
アプリケーション開発と構築サイドでは、SDKの提供も重要になる。
「目標はSAPアプリケーション上で動くモバイルアプリケーションの構築を高速化、効率化すること」とStephan氏。「(マルチデバイス対応などの)柔軟性も提供」と付け加える。すでにSDKの展開は始まっているが、今後「SAP NetWeaver Mobile」「SAP BusinessObjects」「SUP」と統合可能で、オフライン機能や他のSDKとの統合にも対応するSDKを提供予定とした。
モバイルエンタープライズでは、管理側の作業はどうなるのだろうか?iPhone、iPad、BlackBerryとさまざまなデバイスが接続されると、管理者の負担は増えはしないだろうか?
管理面では、SybaseのAfariaを紹介した。Afariaはデバイス管理ツールで、一元的に端末にインストールするアプリケーションやデータの管理、セキュリティ対策などを講じることができる。
これに加え、SAPは顧客に代わって管理するクラウドサービス「On Boarding」を提供する。企業は管理したいデバイスを同サービスに登録することで、バックエンドに接続するアプリケーションを設定できるという。On Boardingは、Sybaseポートフォリオの一部としてすでに一部機能を提供中だ。
このように、Sybaseの技術を利用したモバイルエンタープライズを進めるが、Stephan氏は最後に、エコシステムの重要性についても触れた。
「モバイルのバリューチェーンは大きくて複雑。SAPはコアのコンポーネントとパートナーシップを提供し、顧客は自社のニーズに沿ったモバイル対応を進めることができる」と述べ、テレコム、モバイルベンダー、ISP、SIerなどと幅広く連携して、顧客のモバイルエンタープライズ適用を推進していくとした。