「そう。全部です。ストレージを提供するなんてのも、Storage Large Scaleだと○ドルで、Storage Small Scaleだと▲ドルだし、運用状況を分析してレポーティングするってのも、Analysis & Reportingで1回当たり△ドルと決まっています。ユーザートレーニングをするのもServiceで、1トレーニング当たり▼ドルですし、機構改革があった時のLANの張り替えなども、当たり前にRelocation Serviceで、1ユーザー当たり▽ドルって決まっています。PCを配ったり、トラブル対応をしたりするのも、当然、Desk Top Support Serviceです。すなわち、全部値段がついている」
「運用がそうなるというのは、すごいイメージがつくけど、開発もそうなの?」
「鋭いですね。これは、Catalogue化されている会社とされていない会社があります。どういう違いか、わかりますか?」
「流れ的にSOAと関係ありそうだね。ちょっと、考えさせて……」
「どうぞ……。ごゆっくり。それはそうと部長、一言いいでしょうか」
「何?」
「このコーヒー、あんまりおいしくないですね」
ITのオペレーションモデルの現代化
「宮本君、こういうことじゃないの……結論から言えば、高度にSOA化されているところはService化が進んでおり、開発などの作業やモジュールに値段がついている。しかし、レガシーシステムが多い場合には、Service化が進んでいないということだね」
「ご名答です」
「理由を説明してみるよ、宮本君。SOA化というのは、ある一面で言えば、モジュールをServiceとして予め作っておくことだよね。一方、従来型の開発は、完全な受注生産。このSOA型開発と従来型開発の間には、原価の把握の違いがある。従来型の開発では、あらゆるコストが原価となるから、そこに付加価値を足したものがフィーであったりコストであったりとなる。反対に、いろいろなところで使うことを前提とするSOAの場合、極論すると、コストの発生と回収の相手が一致していないことが多いから、Serviceとしてフィーにしておかないと、回収が考えにくくなるということじゃないかな」
「いやぁ、部長。相変わらず、素晴らしい。そういうことなんです。これ、何かに似ていませんか?」
「製造業のモデルに近いってこと……かな?」
「本当に部長って素晴らしい。そうなんです。言い方を変えれば、ソフトウェアだけの話をすれば、パッケージベンダーなんかにも近いかもしれませんし、インフラサービスまでを含めて考えると、クラウドベンダーの経営に近いかもしれませんね」
「おぉ。なんか、1回目の話にいきなりつながってきたな。こういう状態に早く持っていくことが“クラウドレディネス”って言っていたっけね」
「そうなんです。部長。クラウドを使おう、買おうとするならば、自分たちがユーザーから見てクラウド化していないと、様々な面で整合性が取りにくくなるんですね。良くIT部門の人が、ユーザーから『クラウドを使いたい』と言われて、直観的に反対することがあります。それはクラウドは本来的に標準的・汎用的な性質のものが多いんですが、個別ケースでのみ使わざるを得ないという事情が将来起こる可能性があることに反発していることが多いですね」
「でも、言われてみると、そうだね。宮本君。あらかじめ開発しておいておくなんて、R&Dの域に近いね」
「そうですね。それ以外に、ユーザーとの関係の視点から、何か気付きませんか?」
(続きは6月30日に掲載予定)
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宮本認(みやもとみとむ)
ガートナー ジャパン株式会社
コンサルティング部門マネージング・パートナー
大手外資系コンサルティングファーム、大手SIerを経て現職。16業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。ソリューションプロバイダの事業戦略、組織戦略、ソリューション開発戦略、営業戦略を担当。また、金融、流通業、製造業を中心にIT戦略、EA構築、プロジェクト管理力向上、アウトソーシング戦略プロジェクトの経験も多数持つ。
編集:田中好伸
Twitterアカウント:@tanakayoshinobu
青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。