全日本空輸(ANA)は、約70種におよぶ業務システムの「共通連携基盤」を構築した。構築を担当したNECが9月29日に発表した。
ANAでは、多数の基幹業務システムや関連システムが異なる通信手段で複雑に連携していたため、老朽化に伴う既存システムの一部改修コストの増加、新規システムの開発期間の長期化、運用保守コストの増大への対応が課題となっていた。
共通連携基盤は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方をベースに、NECのOMCS(オープンミッションクリティカルシステム)SI技術を用いて構築された。個別最適化された多くのシステムを標準化されたインターフェースで連携するため、ESBを活用してシステム間連携を標準化、拡張性と柔軟性を向上させたという。
ESB製品としてOracleの「Oracle Service Bus」を採用、70種の基幹業務システムを約4カ月で共通連携基盤に移行させた。また、この基盤によって、従来のようなシステムごとの個別インターフェースを作り込む必要がなくなり、開発工数の約3割削減を見込めるとしている。
サーバ、ストレージには、NECの「NX7700iシリーズ」と「iStorage D8シリーズ」を採用した。OMCS SI技術に基づく高可用設計と性能検証により、システム稼働率99.995%(サービス全体では無停止)という高い可用性と、最大毎秒1000件を超える膨大なデータを最大TAT(ターンアラウンドタイム)130ミリ秒で処理する高性能を兼ね備えるという。
システム全体の性能異常を早期に検知し、原因分析を迅速化するため、NECの運用管理ソフト「WebSAM MCOperations」を中核とした統合監視システムを導入した。これにより、共通連携基盤のインフラからアプリケーションの状態まで、業務システム単位でリアルタイムに可視化することで、性能遅延を早期に検知し、障害時の影響範囲の把握や原因特定を迅速化できるとしている。また、NECでは開発段階から運用プロセス設計をANAと共同で実施し、約3万件の障害対処ナレッジにより、インシデント1件あたりの平均対応時間を従来比で約90%短縮化。運用後の安定稼動を実現したという。
ANAでは、共通連携基盤を活用して、旅客管理システム、運航管理システム、決済システムなど、同社の基幹業務システム間のデータ連携を標準化するとともに、今後新たに構築するシステムやクラウドサービスなどとも連携する考えだという。