(本特集のアーカイブページ「三国大洋のスクラップブック」も合わせてご覧下さい)
週末の午後、自宅の茶の間にいくと、テレビのニュースバラエティ番組で池上彰氏がギリシャ経済危機の話をしていた。「どうしてそうなったのか」「いまどうなっているのか」を同氏持ち前のわかりやすい話しぶりで解説していた。
「ギリシャ通貨の価値が相対的に下がったために、外国からの観光客は増えたけれど、政府が税収増加をねらった消費税(付加価値税)を大幅に引き上げたため、顧客のほうも前ほど気前よくお金を落としていかなくなった」というレストラン経営者の話や、「国が債務返済のために有料道路をスペイン企業に売却したところ、これに異議を唱える市民が料金所の入り口にあるバーを勝手に持ち上げて、クルマのドライバーに『タダで通れ』とけしかけ、ドライバーのほうもそうした実力行使に声援のホーンを鳴らし、そのかたわらで警察官はパトカーのなかから指をくわえてみているしかなかった」という光景を撮影した現地での取材映像も流れていた。
やがてカメラがスタジオに切り替わり、「対外債務の不履行を宣言(デフォールト)した国は、どんなことになるか」という話題になった(番組は、司会役の池上氏がひな壇にならんだ大勢のタレントに質問をなげかけ、その答えをもらいながら話をすすめていく、というお馴染みの形式)。どういう答えが出てきたかは忘れてしまったが、その答えを受けて、実際に債務不履行した過去の例——しかも比較的短期間で経済的な復活を遂げた例として、アルゼンチンの話になった(アルゼンチンのデフォールトは2001年)。
池上氏はこの「復活」の理由について、「アルゼンチンは穀物などを中心に比較的輸出できるものが多かったのが幸いした」と解説していたかと思う。つまり、国がいったん破産したあと、対外的に安くなった通貨を利用してたくさん輸出し、外資を稼ぐことができたということ。そして、そういう運のいいアルゼンチンに比べると、ギリシャはハンディキャップが大きい——通貨ユーロの「しばり」があって通貨の切り下げもままならず、またEUを勝手に抜けることもままならない(他の加入国への影響を考えると)。しかも、国全体の収入のなかで観光業が占める比率も高く、そのことと背中合わせに輸出できそうなものもあまりない……といった話の展開だったかと思う。
そういう番組を観るともなくみていたのだが、後日道を歩いていて、ふとあることに気づいた。
それは、ギリシャもアルゼンチンも「アップルがスマートフォン市場で苦戦している市場」という共通点があることだ。
現在、経済的・社会的に「崖っぷち」に立つギリシャと、リーマンショックの影響も比較的軽微で順調に成長を続けているとされるアルゼンチンとは、当然「苦戦」の理由も異なる。今回はこの「苦戦の理由」についての話を少ししてみる。