「スマート・ジョブ」と新たな産業の集積地(クラスター)
最後に採り上げるのは「スマート・ジョブ("Smart Jobs")」——高い付加価値を生み出す、従来のブルーカラーの仕事とは内容が異なる「ハイテク製造業」の仕事が、米国内の意外なところで育ってきているという話。
まずはそのことを説明したプレゼンテーションのビデオを紹介する。
Planet Money's Adam Davidson: Smart Jobs from WIRED on FORA.tv
このプレゼンテーションを行っているのは、米NPR(National Public Radio)で「Planet Money」という番組(とブログ)を担当するジャーナリストのアダム・デイビッドソン(Adam Davidson)氏。同氏はWIREDの2011年5月号に寄稿した記事のなかで、次のように記している。
「(略)これらの新しいミドルクラスの仕事を『スマート・ジョブ』と呼ぶことができるかもしれない。スマート・ジョブの仕事の中味は革新的(イノベイティブ)でハイテクなものだが、ただしその多くはシリコンバレーやニューヨークから遠く離れたところで行われている。また、専門性が高いけれど、必ずしも博士号が必要というわけでもなく、職種によってはカレッジ卒の資格さえ必要ない場合もある。ただし、これらの仕事に就き、あるいはそれをうまくこなしていくには、ある程度の真剣な訓練("some serious training")を、OTJもしくは職業訓練プログラムを通じて積むことが求められる」(註2)
この最後の一文には、一般教書演説の場に招かれ、ミシェル・オバマ大統領夫人の隣に座っていたジャッキー・ブレイ(Jackie Bray)さんのイメージが重なってくる。
「スマート・ジョブの仕事は(従来のブルーカラーの仕事と同じく)工場や工作機械、プラスチックや薬品などと関連しているが、ただしこうした機器の操作や材料の取り扱いには、腕力以上に知力が必要とされる」(註3)
そういう新しい種類の仕事が、さまざまな分野で生まれ、増加してきている。
註2:アダム・デイビッドソン氏によるスマート・ジョブの解説
These new middle-class jobs are what you might call smart jobs. They’re innovative and high tech, but most of them are located far from Silicon Valley or New York. They’re specialized, but that doesn’t mean you need a PhD or even (in some cases) a college degree to get them or to do them well—though they do require some serious training, whether on the job or in a vocational program.
註3:スマート・ジョブの仕事は腕力以上に知力が要求される
Smart jobs can involve factories and machines, plastics and chemicals, but operating those instruments and manipulating those materials demands far more brains than brawn.