各企業が、社内で使用しているIT機器を外部のデータセンターに預けて運用したり、機器を所有せずにサービスだけを使用したり(PaaS化やSaaS化)することによって、IT機器で使用するエネルギーを大幅に削減(省エネ)することができます。IT機器を設置する為に設計されたデータセンターは、通常のオフィスビル内に設けられたサーバルームなどに比べ、効率的に電力を供給したり、冷却したりすることができるからです。例えば、データセンターをモジュール化して、ラック列の中に空調機を置くInRow空調や、ホットアイルを閉じ込めるホットアイルコンテインメント(HACS)を使えば、冷却効率が大幅に向上します。(図1)
このような構成では、ラックの発熱量とそれに応じて変化する必要な冷却風量に対して、InRow空調機の冷却能力や送風量を最適化することにより、冷却効率を最も高くすることができます。そのためには、ラック吸気口やホットアイルの温度を監視して、それに応じて空調機を制御する必要があり、データセンターの『見える化』が省エネと効率化に大きな威力を発揮します。
更に、データセンターではサービスに使うIT機器を、仮想化を活用して統合することによって、一層の省エネを推進しようとしています。一方、クラウド化・仮想化されたデータセンターの中ではIT機器の運転状態が時々刻々ダイナミックに変化するために、その消費電力と発熱量もダイナミックに変化することになります。この変化に対して空調機器の制御が追いつかなければ、冷却効率は却って悪くなってしまいます。これを防いでデータセンター自体の効率を高めるためには、IT機器の動きと、空調などの設備機器の動きとを一致させる必要があり、発熱量、気流、温度などを『見える化』して管理することで、最適な省エネを達成することができます。(図2)
本特集「エネルギーの「見える化」が生み出すデータセンターの効率化」では、IT機器・データセンターの消費電力、発熱、省エネルギーについて順を追って考え、『見える化』によってデータセンターを効率化する各種の方法について解説します。
参考資料:
シュナイダーエレクトリック株式会社 ホワイトペーパー
#43 データセンターとサーバルームの動的な電力変動
#118 仮想化:電源および空調の最適化によって最大限のメリットを実現
著者紹介:
シュナイダーエレクトリック株式会社 取締役 佐志田伸夫
技術士(電気電子部門)