社長交代のソニー、パナソニック、シャープ--新社長の共通点は - (page 2)

大河原克行

2012-03-21 14:41

 ソニーは、4期連続の赤字となる2200億円の最終赤字。パナソニックは過去最高となる7800億円の最終赤字。そして、シャープは当初の黒字見通しから一転して2900億円の最終赤字を見込んでいる。

 各社ともに薄型テレビ事業の不振が大きくのしかかり、2011年度は薄型テレビ事業の構造改革に追われた1年。つまり、新社長の評価はテレビ事業の回復が、ひとつのバロメータになるのは間違いない。

 そして、会見のなかで3人が共通して「スピード」という言葉を使っていた点も見逃せない。

 ソニーの平井次期社長は、「施策を実行する上で、競争相手は猶予を与えてくれない。もはや猶予はなく、スピード感をもち、覚悟をもって取り組んでいく」と発言。パナソニックの津賀次期社長は、創業者以外では最年少の55歳で社長に就任するが、「スピード感がなければ、55歳でも意味がない。スピード感がある経営をしていきたい」とコメント。シャープの奥田次期社長は、「グローバルビジネスにはスピードが重要であり、その競争に耐えうる体制づくりを行う」と語る。

 薄型テレビ事業の不振では、スピード感を持った構造改革に遅れたという反省が各社にはある。その反省が共通の言葉として、3人の次期社長の口から発せられたのだろう。

 もうひとつの共通項は、50代の新社長が並んだという点だ。

 平井次期社長は51歳、津賀次期社長は55歳。ソニーのストリンガー会長の70歳、パナソニックの大坪社長の66歳からはそれぞれ大きく若返っている。シャープは社長の年齢が上昇したが、それでも奥田次期社長は58歳。電機大手では、富士通の山本正己社長とNECの遠藤信博社長が同じく58歳。日立製作所の中西宏明社長が66歳、東芝の佐々木則夫社長が62歳、三菱電機の山西健一郎社長が61歳であることに比べると、ソニー、パナソニックの次期社長は、電機大手のなかでは若いことがわかる。

  • パナソニック代表取締役社長の大坪文雄氏(左)と津賀一宏代表取締役専務※クリックで拡大画像を表示

 一方で、ソニーの平井次期社長やシャープの奥田次期社長の2人は海外経験が長いのに対して、中村邦夫氏、大坪文雄氏と海外経験者を続けて社長に登用してきたパナソニックは、海外経験がない津賀次期社長を任命。グローバルエクセレンスを目指すパナソニックにとって、どんな影響があるのかが注目されよう。

 また、課題となる薄型テレビ事業に関しては、平井次期社長および津賀次期社長が直近で同事業を担当していたが、実際に経験が少ないのが実態。それに対して、奥田次期社長は、直近での関連はないものの、AQUOSの事業立ち上げに携わるなど、テレビ事業を深く知り、自らも「AQUOSの事業立ち上げに携わったことは私の大きな財産」と言い切っている。テレビ事業の舵取りに経験の違いがどう生きるのかも注目したい。

 ソニーの平井次期社長が目指すのは「One Sony」。そして、パナソニックの津賀次期社長は「エコ&スマート」を掲げている。また、シャープの奥田次期社長が目指すのは「誠意と創意」という。100年の歴史を持つシャープが、黎明期から掲げる取り組みへの復活だ。

 ソニー、シャープは4月から、パナソニックは6月から新社長体制がスタートする。厳しい状況から事業をスタートするのは3社に共通したものだ。「スピード」を標榜する3人の社長は、初年度となる2012年度から、早くも成果が求められることになろう。

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