「見えないコスト」の軽減を実感——要望は「安定稼働」
全面移行から現在まで約半年間の運用を続けているが、2011年9月にマイクロソフトのクラウドサービス全体にかかわる4時間ほどのサービスダウンが発生した以外には、特に大きな問題は起きていないとする。
この大規模ダウンは、皮肉にも同社のOffice 365移行直後に発生したことになる。同社では、Office 365への移行にあたって、もちろんSLAについても検討を行っていた。
北氏は「オンプレミスで運用する場合とも比較検討はしたが、全体的なリスクを考えた上での結論としては、ほぼ同程度のリスクと判断した」という。もっとも、予想外のダウンはビジネスへのインパクトも大きい。北氏は「マイクロソフトには、今後もより安定した運用を求めたい」と話す。
課題であった「メールボックス容量の不足」や「担当者の管理負荷の軽減」といった問題は、Office 365の導入によって、大きく改善されたという。特に、担当者の管理負荷の軽減について北氏は「メールシステムは基本的に止めてはいけないもので、メンテナンスやユーザーサポート面での負荷は予想以上に大きかった。クラウドの導入によって、そうした見えづらい人件費が削減できる点については、効果を実感している」と話す。
クラウドへの移行によって負荷が軽減された情報システム部のリソースは、今後、Office 365をベースにした新たなシステム連携や、より使いやすいシステム提供のために振り分けられることになる。採用理由のひとつである、本社のExchangeシステムとの連携の検討も、そのひとつだ。
また、SharePoint OnlineやLync Onlineの導入と連携による、情報共有やワークフローの高度化も検討していきたいという。

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「NotesからSharePoint Onlineへの移行は、現在各部署で個別に管理している社内の共有データの棚卸しを行うための良い機会になるだろうと考えている。自分たちが扱っているどのような情報を、どのような形で共有して、業務に生かし、効率化していくかを社員が率先して考えられるような枠組みを作っていきたい」(北氏)
北氏は、そのための機能として、SharePoint Onlineの「ワークフロー」や「アンケートシステム」などに期待を寄せているという。「これらがSharePoint上で実現できれば、オフィスのペーパーレス化実現に一歩近づくことができる。大量に消費される紙はコスト的にも大きな問題。また今の業務の中で、紙やメールを使って行っている部分を、SharePointのようなシステムに置き換えることで、コスト面、業務効率面での変化が起きることも期待している」と話す。
今後、引き続きOffice 365を利用していくにあたり、北氏がマイクロソフトに最も求めたいことは、前出のとおり「安定した運用」だという。クラウドのメリットのひとつは、運用管理の負担をベンダーに任せられる点だが、そのメリットは、システムにひとたび問題が発生したときには、「自分たちでは何もできない」というデメリットに変わってしまう。その意味で「一番には安定した運用と、問い合わせへの迅速なレスポンスを含む企業システムとしてのしっかりしたサポートを望みたい。機能や使い勝手は、その次だ」という要望には、共感できるシステム管理者も多いはずだ。
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