シャープが大きな曲がり角にきている。
2011年度の通期業績は、連結売上高が前年比18.7%減の2兆4558億円、営業損失は前年度実績から1164億円悪化の375億円の赤字、経常損失は1245億円悪化の654億円の赤字、当期純損失は3954億円悪化の3760億円の赤字となった。最終赤字は過去最大だ。
同社では「主要分野における売上高の大幅な減少に加え、在庫評価減、事業構造改革費用、繰延税金資産取崩などの体質改善、またはイレギュラーな費用の計上により赤字になった」(シャープ 常務執行役員経理本部長の大西徹夫氏)とし、これに東日本大震災や円高の影響が加わったことが大幅な減収減益につながったといえる。
だが、過去最大の最終赤字に落ち込んだシャープが抱える最大の課題は、なんといっても液晶事業である。
手を打ち続けた液晶事業
液晶テレビ事業は赤字となり、液晶パネル事業についても422億円の赤字となった。
もちろん、シャープは液晶事業の事業改革に向けて、いくつかの手を打ってきた。
液晶パネル生産については、亀山第2工場を従来のテレビ向けの大型液晶パネル生産から、中小型液晶パネルへとシフト。この4月からは高精細、低消費電力といった特徴を持つ同社独自のIGZO液晶の量産を亀山第2工場で開始した。また、堺工場では世界最大規模となる第10世代の液晶パネル生産体制を生かして大型パネルに特化。60型以上の液晶テレビの販売を強化するとともに、デジタルサイネージをはじめとするBtoB展開を強化する姿勢を明らかにしている。
さらに、台湾の鴻海(ホンハイ)グループと戦略的グローバルパートナーシップ契約を締結。堺工場における液晶パネル工場を運営するシャープディスプレイプロダクト(SDP)に、鴻海精密工業の代表を務める郭台銘氏および他の投資法人などが約46.5%を出資。シャープの出資比率は約93%から46.5%に下がり、両社の出資比率は同等になる。
今後、鴻海グループとの協力関係によって、同社の液晶事業が推進される体制が確立されたことになる。
鴻海と21世紀型コンビナート
鴻海グループとの提携は、大きく2つに分けることができる。
ひとつは、先に触れたように、SDPに対する出資である。
これは液晶パネル生産拠点に対する出資であり、この点だけを捉えれば鴻海の影響は液晶パネル生産に関連する部分に留まる。
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グリーンフロント堺と呼ばれる堺工場、実は19社が同じ敷地内に生産拠点などを建設し、ひとつの工場を形成している。従来にはない生産拠点のスタイルともいえ、シャープが堺工場を「21世紀型コンビナート」と呼ぶ理由のひとつとなっている。
19社のなかには、シャープやSDPのほかに、大日本印刷や凸版印刷、コーニングなどの液晶パネル生産に関連する企業、物流やインフラに関する企業などが含まれる。
SDPへの出資だけでは、こうした企業に対して鴻海グループの影響は直接及ばない。
しかしシャープは、堺工場における大日本印刷と凸版印刷の液晶カラーフィルター事業を、6月末にもSDPに統合することを4月26日に発表。結果として、鴻海グループはより一歩深い形で堺工場での液晶パネル生産に踏み出すことができる。
今後は、堺工場に進出している残りの企業と、新たなSDPとの関係が改めて構築されることになるだろう。