再び主戦場に降り立つマイクロソフト - (page 3)

三国大洋 2012年06月27日 16時40分

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 ソフトウェアを核として、ハードウェアの設計(生産プロセスを含む)やサービス(外部アプリやコンテンツ提供者のエコシステム育成を含む)まで自社でコントロールするアップルのやり方は、いまのところ大成功を収めている。

 そのことは否定しようもないのだけれども、同時にかつて「極度の心配性の者だけが生き残る」("Only the Paranoid Survive")という名言を口にし、歴史に名を残す経営者がいた当のインテルがいま置かれている状況を考えると、少なくともテクノロジーに関わる分野では「盤石」などといった概念自体がもはや意味を持たないことが感じ取れるかと思う(註4)。

 状況はオセロゲームみたいなもの、しかも同時に何人ものプレーヤーが石を動かし続ける立体的なオセロゲーム——そんなものを目にしたことはないが、それだけ厄介な状況にすでになっているのだと思う。

 思わず「諸行無常」といった古くさい言葉が頭の中をよぎってしまったが、2000年代前半にマイクロソフトが初めて株式配当に踏み切った頃のことを朧気ながらも覚えている者としては、そんなことを思いもする。

 「枕話」として書き始めたNYTの記事の話がずいぶんと長くなってしまった(そろそろ体力も尽きかけている)。

 次回はいよいよ本題——Surfaceの発表に至る過程で「ハードウェアまで自前でやらざるを得ない」とマイクロソフトが判断したことについて、数字の分析から仮説を組み立てているホレス・デディウ(Asymco)の見解、さらに「こんなに業績を上げているのに、どうして世間はきちんと評価しないのか」というスティーブ・バルマーCEOの不満が行間から読み取れる『Bloomberg Businessweek』誌の特集記事などを紹介していきたい。

 最後に。

 今回のマイクロソフトの発表ですでにひとつはっきりし始めているのは、テクノロジー業界全体でふたたび大きな「潮目の変化」が起こっているということかもしれない。少なくともテクノロジー関連のメディアの伝え方からは、そういった変化が感じ取れる。

 ここ2年ほど——2010年はじめ、グーグルのスマートフォン参入にスティーブ・ジョブズが激怒したという話をNYTが伝えてからは、アップルとグーグルという対立項に、アマゾン、フェイスブックを加えた「Big Four」が主たるプレーヤーとなって競い合うという基調があったと思う。2011年のD9カンファレンスに登場したエリック・シュミット元グーグルCEOは、「少なくともコンシューマー分野ではこの四天王が重要で、マイクロソフトは法人市場という別の分野で上手にロックインしているけれど、コンシューマー分野ではもはや牽引役ではない」という見方を示していて、これが十分説得力をもつものと感じられた。(註5)

 しかし、そんなマイクロソフトがいま、法人事業を守るためにコンシューマー分野での武器を使って再び主戦場に乗り込みつつある——この感触が実体のあるものかどうかの検証は追々進めていくとして、アップル、マイクロソフト、それにグーグルの三つ巴の総力戦は、これまでにもまして興味深く、かつ意外な分野にまで大きな影響を及ぼしそうなものになるという気がしている。

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註4:アップルの独り勝ち

現在のアップルはすでに粗利率(operating margin percentage)の高さでマイクロソフトやグーグルを上回っている。

Who will be Microsoft's Tim Cook? - Asymco

また、サプライチェーンの効率化——つまり、下請けへのしわ寄せが目立ち、それが中国の生産現場での労働条件や安全対策の不備につながっていたという話は、この連載の第1回で触れたNYTの記事に書かれていた通り(下記記事)

"You can set all the rules you want, but they're meaningless if you don't give suppliers enough profit to treat workers well," said one former Apple executive with firsthand knowledge of the supplier responsibility group. "If you squeeze margins, you're forcing them to cut safety."

In China, Human Costs Are Built Into an iPad - NYTimes

アップルがヒールになる日…?--iエコノミーの光と影(1)

なお、アップルは今年に入ってからティム・クックCEOの下で大きくやり方を変えてきている点も各所で既報の通り。フォクスコンでは労働者の賃金引き上げが冬に発表されていたし、先週にはApple Storeのスタッフ(小売業の賃金レベルが基準となっているため、本社社員に比べると低い)の大幅な引き上げもニュースになっていた。

アップルという名の普通の会社


註5:エリック・シュミットが示した「ビッグフォー」

Mossberg: It seems like we are in a new platform war. Everyone knows about Windows vs. Apple platform - which we all know Microsoft won handily.

Schmidt sees a "gang of four" including Google, Apple, Amazon and Facebook.

Kara: Why not Microsoft?

Schmidt: Microsoft is not driving the consumer revolution. They've done a very good job of getting them locked in on the corporate side.

Google's Eric Schmidt On Privacy, Politics and Facebook

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