Fordは、過去の時代の鈍重で古くさい巨大企業というイメージを、前向きで技術力の高い21世紀の企業というものに転換することに成功した。Henry Ford氏が創立した同社がこの評判の再生を勝ち取ることができたのは、主として同社の製品ラインに採用された「Ford SYNC」テクノロジの発表、最高経営責任者(CEO)Alan Mulally氏の常にテクノロジを取り入れようとする姿勢、そして何より、同社の車が購入され、再び黒字になったという事実が認められたからだ。
しかし、舞台裏であるバックオフィスで展開されたFordのテクノロジ戦略は、消費者やマスコミから大きな注目を集める華やかなFord SYNCや「MyFord Touch」のイノベーションと同じくらい重要なものだ。わたしは最近、ミシガン州ディアボーンにあるFordのキャンパスを訪れ、舞台裏の魔法がどのように働いているかの一端を目にした。わたしはまた、Fordの歴史を背負っている世界本社の建物で、Fordの最高情報責任者(CIO)であるNick Smither氏と話をし、2000年代半ばの瀕死の状態からの波乱に満ちた業績好転の中で、同社のIT部門が果たした役割について聞いた。
Smither氏は、Mulally氏の主要な目標の1つをかなえるために、IT部門がいかに組織のあり方を変え、何億ドルもの経費を削って、その資源を成長の機会を作るために振り分けたかを語り、またIT部門がツールを渡すだけの部署ではなく、ともに仕事をする組織になることによって、いかにユーザーからの評判を勝ち取ったかを説明してくれた。
提供: Jason Hiner CBS Interactive
すばらしいタイミング
Smither氏は2006年4月にCIOに就任する以前には、欧州と北米、南米の様々なFordの部署で、25年にわたってエンジニアリングとITに関する役職を務めた。英国人である同氏は、前CIOのMarv Adams氏がCitigroupに転職した後、ITのトップを務めることになった(Adams氏はその後Fidelityに、さらにTD Ameritradeに移っている)。2006年の初め頃、Fordは最悪の時期にあり、その会社のITのトップを務めることは、特に魅力的とも、安定しているとも見えなかった。
Ford CIOのNick Smither氏
提供: Ford Motor Co.
しかしその後、Fordは2006年9月に起死回生の一手として、同社の再生を率いてもらうためにMulally氏をBoeingから引き抜いた。
「わたしはMulally氏が登場する5カ月前にその地位に就いていた。つまり、タイミングは最高だった」とSmither氏は話した。
Mulally氏はFordのハンドルを握ると、直ちにいくつかの戦略を動かした。
- 製造ラインを単純化し、Fordブランドそのものに主に力を入れる。
- 消費者が実際に買いたがっている車を作る。Fordが車を作ろうとするすべてのクラスで、そのクラスで最高の車を作る。
- すべての部門長を集めて毎週開かれる「事業計画再検討会議」で、データと事実を詳細に検討する。
- 同社を1つのグローバルな企業として統合し、部門間の内輪もめをやめ、Fordが持つグローバルな資源の力と規模を活かす。