三国大洋のスクラップブック

IT・選挙・戦略:内製のオバマ大統領、外注のロムニー候補

三国大洋

2012-11-22 18:06


オバマ陣営のITチームは有給の開発者だけで1000人という大所帯だった(出典:ホワイトハウス)
オバマ陣営のITチームは有給の開発者だけで1000人という大所帯だった(出典:ホワイトハウス)

 先の米大統領選でオバマ陣営の勝利に一役買ったIT戦略。その様子を詳細に伝える記事がさまざまなメディアに掲載された。

 開票日翌日に公開されたTIMEの記事は、IT戦略の概要を伝えるものだった(関連記事:バラク・オバマ版『マネーボール』)。しかし、その後に出てきた記事は、組織や人、技術などを深掘りしたものが多い。

 今回はそうした記事の中から興味を引いた部分を紹介してみたい。

クラウド、オープンソース、API

 Amazon Web Services(AWS)、Elastic Compute Cloud(EC2)、Simple Storage Service(S3)、Rails、Python、NoSQL、Service Oriented Architecture(SOA)——。

 こうしたキーワードが次々と登場するのが、Ars Technicaに掲載された「Built to win: Deep inside Obama's campaign tech」という記事だ。

 その冒頭にオバマ陣営のITチームが取り組んだプロジェクトの片鱗を伝える記述がある(註1)。

毎秒4Gb、毎秒1万リクエスト、2000のノード、3カ所のデータセンター、180テラバイトのデータ、85億回のリクエスト。これに対処できるシステムの設計、実装、撤収に要した日数:583日。

 2008年の大統領選挙では、オバマ選対本部に正式なITチームは存在しなかった。Facebook創業メンバーのクリス・ヒューズ(註2)など、多少の専門知識をもつ人材が一部にいたのは事実だが、全体としては外部ベンダーの製品に大きく依存せざるを得なかったのだ。

 そのせいか、鳴り物入りで投入された有権者投票促進システムの「フーディニ」(Houdini)も、ネットワークの過負荷で投票日当日に機能しなくなり、各地から伝えられたデータ(登録した有権者のコード)をボランティアが手入力するというトラブルに見舞われた。

 オバマ選対本部はこの失敗を踏まえ、内部に正式な技術開発・運用チームを発足させて、本格的なシステム構築に乗り出した——と、このような経緯があったらしい。

本番は一度しかない選挙 枯れたテクノロジーを活用

 このチームが生み出した技術には、次のようなものがある。

  • Narwal:「一角クジラ」を意味する言葉で、さまざまなソースから収集したデータをリアルタイムで統合・同期するシステム。APIはPythonで記述されている。
  • Dashboard:各地のボランティアやデータ解析チームなどが利用。Ruby on Railsで構築された。
  • Dreamcatcher:ウェブ上で有権者のマイクロターゲティングを行うシステム。
  • The Optimizer:テレビCM枠を効率的に買うための視聴率分析ツール。

 また、計算処理インフラとしてAWSを大々的に活用。限られた時間と予算のなかで、拡張性のあるシステムをうまく構築したという。もちろん、すべてのシステムを内製で開発したわけではない。メールマーケティングには外部ベンダーが提供する既製品を使った。

 さまざまなシステムの開発に際して、オバマ選対本部のテックチームは「実績のないものは極力避ける」ようにしていたという。本番は一度しかない選挙ゆえに、できるだけ枯れた技術を選ぶようにした、といったところだろう。この点に関して、オバマ選対本部で最高技術責任者(CTO)を務めたハーパー・リードは、「技術的に何か新しいものを生みだしたわけではない」と謙遜気味に述べている。(次ページ「技術開発のプロと選挙のプロ」)

註1:オバマ陣営のITプロジェクトの片鱗

4Gb/s, 10k requests per second, 2,000 nodes, 3 datacenters, 180TB and 8.5 billion requests. Design, deploy, dismantle in 583 days to elect the President. #madops

このツイートは、オバマ選対本部のITチームで開発・運用グループの責任者を務めたスコット・バンデンプラスという人物のもの。


註2:クリス・ヒューズ

マーク・ザッカーバーグのハーバード大学時代のルームメート。現在は買収したThe New Republic誌で自ら編集長を務めている。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    【マンガ解説】まだ間に合う、失敗しない「電子帳簿保存法」「インボイス制度」への対応方法

  2. セキュリティ

    企業のDX推進を支えるセキュリティ・ゼロトラスト移行への現実解「ゼロトラスト・エッジ」戦略とは

  3. 経営

    2023年データとテクノロジーはどう変わるか 分析プラットフォームベンダーが明かす予測と企業戦略

  4. セキュリティ

    リモートワークで浮き彫りとなった「従来型VPN」、課題解決とゼロトラスト移行を実現する最適解

  5. セキュリティ

    第2世代EDRはココが違う 「自動化」でエンドポイントセキュリティの運用負荷・コストを削減

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]